Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

偉大な凡作、M4中戦車

 間に合わせの中戦車M3で第二次大戦に参戦したアメリカ軍だが、欧州戦線ですぐに暴れまわれるはずもなかった。まずは大西洋で危機に瀕している輸送船団を、Uボートから守らなくてはならない。最初の役割は海軍が担うことになったのは、当然である。
 
 陸軍は徴集兵を集め、士官を養成し、兵器を生産した。特に士官は陸軍の根幹を成す要素だが、3カ月の訓練で濫造するしかなかった。ベテラン兵士たちは「90日べらぼう野郎」と陰口を叩いた。兵器生産はそれに比べると順調で、すでにイギリスなどを支援するため生産は軌道に乗っていたのである。
 
 しかし、AFV特に戦車に関してはドイツ軍に劣っていることは確かだった。それが表に出なかったのは、最初に相手にしたのが士気が低く、装備も劣悪なフランス軍北アフリカに駐屯していた)や、補給が十分ではないロンメル軍団だったからだ。しかし今後のことを考えると、もう少しまともな主力戦車が必要だった。
 
 そこで開発されたのが、M4シャーマン戦車。膨大なバリエーションを生み出すベースとなった車体だが、決して優れていたわけではなかった。ただ生産性はよく、設計上改良の余地は十分にあったので、欧州戦線の勝者となった。改良後も1対1ではドイツ戦車に優位には立てず、集団戦法でようやく敵を仕留めていた。代表的な系譜を見てゆこう。右から順に、

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◆M4中戦車(シャーマン)
 兵装:主砲75mm砲、車体機関銃(火力2)、
    同軸機関銃(火力4)、対空機関銃(火力4)
 装甲は時代を考えると厚いとは言えない(正面8・側面他4)
 移動速度:13ヘクス/ターン
 
 ようやく回転砲塔に75mm主砲を乗せることができた。ただこれでも、基本的には歩兵支援兵器である。本格的な対戦車戦闘をするには車高が高すぎた。これは、航空機用の星形エンジンを積んだからでもある。戦車用のコンパクトなエンジンの開発は間に合わなかった。
 
◆M4A1中戦車
 兵装:主砲75mm砲、車体機関銃(火力2)、
    同軸機関銃(火力4)、対空機関銃(火力4)
 装甲は正面だけだが、やや厚くなった(正面11・側面他4)
 移動速度:13ヘクス/ターン
 
 兵装は変わらない。歩兵支援には十分な砲撃力と、機関銃火力があるからだ。対戦車戦闘のためには、まず正面防御を厚くしたということ。現場の工夫として、車体正面に予備の車輪を乗せて臨時の増加装甲にすることもあった。結果として、装甲だけはタイガー戦車(Ⅴ号)並みになった。
 
◆M4A3E2中戦車
 兵装:主砲75mm砲、車体機関銃(火力2)、
    同軸機関銃(火力4)、対空機関銃(火力4)
 装甲はずいぶん厚くなった。(正面11・側面他8)
 移動速度:13ヘクス/ターン
 
 砲塔も含めて全周の装甲が追加されている。結果として、パンテル戦車(Ⅵ号)並みの装甲になった。
 
 M4は大戦を生き抜き、朝鮮戦争中東戦争イスラエルは中古のシャーマンを闇マーケットで仕入れ、改造してソ連製戦車と渡り合った)でも活躍した。基本設計に十分な「遊び」があったからだろうと思う。偉大な凡作と言っていい。