連合と経団連のいわゆる「春闘」の最初のセレモニーで、連合の神津会長が「日本の賃金は低い」とベアを求めたのに対し、経団連の中西会長は「ベアは各社の事情があり一律に決められない。しかし賃金がOECDでも下位になったのは確か」と応じた。これに対し経団連(に代表される大企業)に多くの批判があったという。
・米国バイデン政権のように、最低賃金を上げよ。
・非正規を増やして人件費カットしたのは大企業だろう。
という具合。最低賃金の話はしばらく置くとして、人件費に関しては確かに下がっている。しかしそれは企業が意図的にしたというより、グローバル競争の中で労働者の市場価値が下がったと見るべきだ。30年前、日本のソフトウェア技術者は100万円/月、インドに発注すれば10~20万円だった。当然、両者の差は縮まってくる。現時点で日本の一人当たりの年収ランキングはというと、世界で24位となる。
外国人の給料事情、世界の平均年収ランキング!世界一はどこで日本は何位?|mymo [マイモ] (mymo-ibank.com)
首位のルクセンブルグ(零細国だが金融などに強み)の6割にも満たないのが日本の現状であり、年々ランクを下げている。これはなぜか、多くの経済学者が意見を述べているが、僕は1点だけ「中小企業の生産性向上に失敗しているから」と申し上げたい。
これも経産省OBに教えてもらったのだが、中小企業(の規模)でいることに数々のメリットがあり、大企業になって優遇措置が打ち切られることを望まない経営者が多いという。「中小企業を支援します」と言えば、あからさまな反対を食うことはまずない。政治家はもちろん、支援策を作って予算を付ける府省(経産省に限らない)も権限が増えるのでOK。
業界が不況になって再編できそうになっても、潰れるべき企業を「支援策」が延命させる。経営に窮した企業を吸収して大きくなろうとする経営者にとっては、国の支援は邪魔ものにしか見えない。そもそも大きくなりたい経営者が少ないというのに、その機会を奪っているのが「支援策」というわけ。
国の成長戦略会議、デービッド・アトキンソン氏が「日本の中小企業は生産性が低い」というと炎上してしまいました。関係者は良く知っていること、それを「忖度」せずに言ってくれたことに感謝すべきなのですがね。