Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

WTO改革の要点

 今回のイギリス出張、身に付いたものはぜい肉だけではない・・・と付け加えさせていただく。「Brexit」の状況などもナマで知ることができたのだが、一番「眼からウロコ」だったのは、WTO(World Trade Organization)改革の話。議題の一つに「貿易・投資」があり、日本側のスピーカーは元外務省で今は大学教授をされている人だった。

 

 その話の中で、WTO改革が一つのトピックだった。しかし聞いていると「電子商取引ルール」のことなど全く出てこない。僕としては、G20大阪の時の非公式会合で「大阪トラック」を立ち上げて、

 

 ・WTO改革として電子商取引ルールを導入する

 ・国際的なデータ流通のルール作りをする

 

 の2点を行うことを17カ国で同意したと思っていた。

 

 英語が苦手の僕だが、日本人の英語ならそこそこ聞き取れる。それでもWTO改革のところは理解できなかったので、休憩時間にその方のところに行って疑問をぶつけてみた。すると、「電子商取引の話は、確かにWTO改革の項目の一つです。しかしあくまで一つで、もっと大きな話があるのです」とのこと。

 

        f:id:nicky-akira:20190915102907j:plain

 

 一番大きな問題は、現時点でWTOが全く機能していないことという。WTOは貿易・投資などについて、世界全体で調停・裁定をする最高裁判所のようなところ。ところがそこの最高裁判事にあたる「上級委員」が現時点で3人(定員7人)しか残っていないこと、今年末には2人が任期満了になるので1人になってしまうことを知らされた。

 

 この直接的な原因は、米国が新しい上級委員の選出を拒否していることだが、根は8年前の米中貿易紛争にあるらしい。中国への貿易赤字に悩んだ米国(オバマ政権)はWTOに提訴したのだが、中国に有利な裁定ばかりされて困っていた。2年前にトランプ政権になって、「それなら非機能状態にしてやる」と上級委員の選出拒否という荒業に出たらしい。であるなら、WTO改革とは今の米中紛争に決着をつけるか、決着への道を拓くことだ。デジタル貿易の話は確かに重要だが・・・と納得した。

 

 やっぱり勉強は重要ですね。デジタルブームに乗って、いろいろな場面に顔を出さてもらえるようになりましたが、「外洋」は広いです。研鑽しましょう。