Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

港に浮きたくはなくて・・・

 「ようやく」との思いなのだが、貿易業務の完全電子化に向けて、ITベンダー・商社・保険会社などが業種横断での連合を作ったとの記事があった。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65462740W0A021C2MM8000/

 

 今でも、貿易関連事務には紙ベースの処理が多く残っている。輸出入企業の発注書・受注書、銀行の信用状や物流・保険会社が扱う書類も全部電子化できるようにするのが狙い。郵送の手間は無くなるし、転記ミスなども防げる。心配される改ざん防止には、ブロックチェーン技術で対応するとある。僕がこの記事に感慨深く関係者の努力に期待するのは、かつてこの業界のDXを企んで挫折した経験があるから。

 

 まだ20世紀だったころシンガポールの港湾を見て、その合理性にびっくりした。船が岸壁に着くと、クレーンがコンテナを下ろす。そこにはすでにトラックが待っていてコンテナを乗せるや目的地に向けて走り出す。この間にバックヤードでは通関手続きなどが「電子的に」終了している。

 

    f:id:nicky-akira:20201027072628j:plain

 

 これはいいことを教えてもらったと、さっそく日本でもできないか調べ始めた。当時行政・建設・物流・医療などの業界でのDXを画策していて、その業界のことを調査し提案し、種々画策していたのだ。すでに金融(銀行・保険等)はかなりDXが当時としては出来ていて、物流の中でも海運は驚くほど電子化されていた。なにしろ国際物流の大手3社間では、重要な情報をデジタルで共有できていたほどなのだ。

 

 海の側からと陸の側から追い詰めていくと、港湾のコア部分だけがアナログなのが分かった。「それではそこをデジタル化すれば」とうろうろ歩いていると、ちょっと怖そうなお兄さんたちがやってきて、「これ以上電子化の話、突っ込むと横浜港に浮きますよ」とおっしゃる。さすがにまだ浮きたくなかったので、手を退くことにした。

 

 かつて港湾労働者はひどい待遇を受けていた。長時間労働は当たり前、労災などなしで労働者は搾取され続けた。長い時間をかけて権利を勝ちとっていったわけだ。だから外部からの雇用に影響するような行為には、強く抵抗する組織になっていたと聞く。DXは当時から人員削減につながるとの認識があって、僕が敵に見えたのだろう。あれから20年余り、もう僕の口出しする話ではないですが、港湾のDXがすすんでくれたらと思います。