つくば市で行われたG20貿易デジタル大臣会合の議題は、
・DATA Free Flow with TRUST(通称:DFFT)
・ガバナンスイノベーション(デジタル活用などに関する規制改革)
・人間中心のAI(あくまで人間がAIを使うということ)
・デジタルセキュリティ(ベストプラクティス共有など)
・SDG'sと包摂性(地球全体の持続成長可能な環境づくり)
・データの自由な越境流通(おおむねDFFTと同じ)
・WTOの電子商取引ルール(WTO改革の一環で、デジタルの特性を加味)
・デジタル貿易における途上国の包摂(取り残される国が無いように)
の8つだった。最大の争点は、昨年のG20で合意に至らなかったDFFT/データの自由な越境流通。ご存知のように中国には「Great Fire Wall」というインターネット上の壁があり、越境データを厳しく取り締まっている。欧米や日本の「堕落した情報」が流れ込んできたら、中国では大変な事になると少なくとも共産党幹部は思っている。そうでなくても香港ではデモ騒ぎになっているのだから。だから中国は「データの自由な越境」は呑む事が出来ない。
その一方、中国企業は「壁」を超えて日米欧の市場に入ってきている。中国企業だけが「壁」を意識せずにビジネスをしている現状は不公平だとだれもが思う。また中国には「国家情報法」という規定があり、企業が得た情報は国家が自由に見ることが出来る。日米欧からの情報は中国政府は見放題、その逆はまるきり無理というのも困ったものだ。ことは安全保障から国家の存続にまで影響がひろがってしまい、容易な合意は難しい情勢だった。
そこでG20では(B20同様)、中国と別の意味で気難しい米国を巻き込んだ形での合意を目指したと霞ヶ関の人は言う。一般論として企業や国境を渡って情報が流れることが、経済発展につながることに反対する人&国はいない。その情報がある程度確からしいこと求めるのも同じである。したがってDFFTを原則OKとしながら各論では差異がでてくる。これを文言でカバーしようというのが、レトリックの達人たる霞ヶ関住人の考え方だった。
<続く>