Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

透明・簡素・公平に程遠く

 税制の専門家は、通常世間受けしない消費税の税率UPを2度にわたって実現した安倍内閣を評価している。ただ、前回の増税時に景気の落ち込みが大きかったトラウマから、今回はさまざまな緩和措置が採られている。これについては、上記専門家も賛同するとは思えない。財政再建のための消費増税という大きな方向はやむをえないとしても、税制の原則「透明・簡素・公平」とは程遠い制度になったと、僕も思う。

 

 まず「軽減税率」というもの。欧州各国は消費税制の先輩格だが、おおむねこの制度はある。カルフールで買い物をしたレシートなど見ると、項目ごとに税率が表記されている。とはいえ、複数の税率の対象物をどこで線引きするかは悩ましい問題。日本で新聞というメディアを軽減対象にしたような大きな話から、おもちゃ付き菓子(8%)と菓子付きおもちゃ(10%)の違いのようなレベルまで、透明にできない話も出てくる。いわゆるロビー活動で自社(業種)製品を軽減税率対象にするようなことも、十分に考えられる。

 

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 さらに、キャッシュレス決済対象のポイント還元という時限制度も加わった。大手スーパーでは還元されないのだが、コンビニ等では2%の値引き、中小店舗では5%のポイント還元が得られるというもの。これで、消費税制度全体では、5つの税率が混在する簡素とは言えない状況である。

 

https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201908/CK2019082402000135.html

 

 さらに、いかにも中小店舗に手厚い制度に見えるのだが、その実中小店舗を苦しめかねないことで、最後の公平性すら疑わしい。どういうことかと言うと、対象店舗になるには申請が必要で、かつキャッシュレジスター等の更新が必要だから。これを契機にクレジットカード決済を導入しようというプラス指向の店もあろうが、そんな面倒な事・・・と躊躇する店も少なくなかろう。

 

 極端な例では、設備導入・店員への教育含めて店舗経営への負荷が大きく、これを契機に廃業という店もあるやに聞く。しかもそんな大騒ぎをして、ポイント還元制度は来年6月までだというのだから、「やる気」も起きないだろう。また、制度が終る時の混乱も想定される。いずれにしてももう始まってしまうのだから、なんとか早めに混乱が収まることを祈るだけですがね。