Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

とどめは「Brexit」?

 イギリスを代表する企業のひとつ、大手旅行代理店の「トーマス・クック」社が破産申請をした。ヨーロッパ鉄道の時刻表は最初の欧州出張の時から愛用していて、今でも1冊本棚にある。昨今欧州では飛行機に乗るのはエコでないと主張する富裕層(?)もいて、あの時刻表の価値は高まりそうだったのに・・・と的外れな感傷をもってしまった。

 

https://www.bbc.com/japanese/49792020

 

 僕より少し年長のある人によると、最初の海外出張の時同社のトラベラーズ・チェックを使ったとのことだから、当然のように金融業もやっていたのだろう。旅行と言えば交通手段、ホテル、両替を含むお金が三大要素だから、全部ケアする事業体制だったはずだ。資料によると、航空会社も傘下にある。

 

 上記の記事によると、現在15万人の英国人旅行者が同社のサービスを受けて旅行中で、彼らを英国に帰国させるために「救出作戦」が実行されるという。確かに僕も今年スペインとイタリアにHIS社のサービスで旅行したが、途中でサポートされなくなったら困ってしまっただろう。

 

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 英国政府としては、同社は「Too Big to Fale」の対象ではないとして、倒産回避のための財政支援はしない方針だが、内外に与える心理的影響は大きいだろう。直接的にも、2万人以上の従業員(とそれ以上の関係者)が職を失うことになる。

 

 有名な企業なのだが、2010年頃から経営は苦しかったらしい。一番大きな問題は旅行業界でのインターネット予約の急速な普及だろう。これに格安航空会社や(違法を含めた)民泊の台頭もあろう。ただ直接的な原因は、同社の信用力の低下。これを招いたのは、恐らく「Brexitへの不安」だろう。

 

 企業は信用第一だが、この種のサービス産業にとって「英国からの出入りがどのように困難になるか分からない」というのは、その信用力を大きく下げたはずだ。支援していたファンドがあったとしても、10月末に「合意なき離脱」になった場合の同社への影響を図りかねた可能性もある。彼らが資金を引き揚げるか、債権者が追証を要求した可能性もある。

 

 写真のエンジンはロールスロイス社のもの。先日の出張で同社の人とも話し合ったけれど、同様の不安を訴えていた。どう考えても誰の得にもなりそうもない「Brexit」。そろそろこれに懲りてあきらめないと、第二第三の「トーマス・クック」が出てしまいますよ。