ロシア・ウクライナ戦争は、全く収束の気配を見せない。ロシアが大規模なドローンやミサイル攻撃を都市部に行えば、ウクライナは石油精製所や輸送用鉄道、積出港に攻撃をかける。経済社会に打撃を与える、ボディブローの打ち合いのようだ。ロシアはNATO諸国上空にもドローンを飛ばすなど、東欧での緊張は極限に達しようとしている。
経済制裁は利いていないにしても、ロシア社会がむしばまれていることは確かだ。明確なのは帰還兵問題である。
焦点:ロシア社会に迫る大量の帰還兵問題、政治不安定化リスクも | ロイター
すでに戦死者(KIA)は15万人近くになり、負傷者(WIA)も100万人に及ぶとも言う。死者は帰ってきても何もしないが、生還した兵士は心身に傷を負っていてその存在が社会不安を高めているのだ。

かつてソ連崩壊につながったとされるアフガニスタン侵攻では、5年間の侵攻で戦死者1.5万人、負傷者5万人、疾病罹患者は42万人に上ったという。病気の中にはPTSDも含まれ、心を病んだ帰還兵が社会を乱してソ連という国は崩壊したとも伝えられる。今回のウクライナ侵攻は、当時の5年の長さに近づき、死者数は10倍に及んでいるのだ。
この問題は、もう一つの侵略国(とあえて言わせてもらうが)であるイスラエルについても当てはまる。
イスラエル兵1万人超に心理症状 ガザ戦闘開始後、国防省発表(共同通信) - Yahoo!ニュース
この2年弱のガザを巡る戦闘で、イスラエル軍は900人ほどの戦死者を出した。人口が1千万人ほどの国としては、大きな損失である。しかもPTSD罹患の疑いのある者が1万人にも上るという。彼らの存在も、国家の土台を揺るがす可能性がある。
日本には「人を呪わば穴2ツ」ということわざもあり、血気にはやる若者に重鎮が「返り血は(少なくとも)浴びるものだ」と諭すこともありました。戦争に勝者はいないというのは真実なようです。