Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

英国がウクライナに求めていること

 イスラエルハマスヒズボラ・フーシ派らとの闘い、英仏での総選挙、米国トランプ候補暗殺未遂など、さまざまな国際ニュースが溢れた7月だった。相対的にロシア・ウクライナ戦争の報道が減っている。

 

 噂されたロシア軍の夏季攻勢は、少なくとも大きな戦果を挙げていない。おそらく戦術的には質に勝るウクライナ側が優勢で、寡兵よく大軍を支える構図になっているようだ。今回、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)が戦況を分析し「ウクライナ軍は領土の奪還ではなく、ロシア軍に損害を負わせること」が重要だと公表している。

 

“ウクライナはロシア軍の損害に注力すべき” 英シンクタンク | NHK | ウクライナ情勢

 

        

 

 ウクライナ側も苦しいが、ロシア側も兵力や兵站を集めるのに苦労している。スラブ人多数ではない各自治州・国家から徴兵しているが、ロシア語も通じず戦意も乏しい兵が少なくない。兵器の方も、60年前の主力戦車T-62が多数になっているとの報道もある。

 

 ウクライナ側からすれば、ロシアの中枢に侵攻してプーチン大統領以下の主戦派を抹殺してしまえば戦争終結の道が拓ける。しかしそれは不可能に近いし、可能だったとしても欧米各国はそれを支持しない。ロシアの不安定化は、各国の(日本も)望むところではないからだ。

 

 であればできるだけロシアに出血させて、継戦意欲をそぐことになる。RUSIが求めていることがそれだ。ただこの提案には、英国がウクライナに求めていることが、言外に隠されている。それは、

 

「ロシアをできるだけ長く釘付けにして、他での策動をする余地を与えないこと」

 

 である。ウクライナでの紛争が決着すれば、ロシアは兵力・兵站を立て直し、次の作戦を考え始めるだろう。その可能性全てに備えるには、英国も含めてコストがかかりすぎる。

 

 「兵器や資金は出しますから、ウクライナ人の血でプーチンの野望をしばし食い止めてね」ということでしょうね。英国らしい外交術ですし、日本もその恩恵に(今のところは)浴しているわけです。英国は個人的に好きな国ですが「ロシアの脅威があるうちは日本と仲よくしよう」との意図が透けて見えるのは気に入りません。