Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

リアル空間でのアバター

 AIで作った本物そっくりの人物映像は、表情豊かでそれらしく話す。このところ世界中で起きた選挙にも、AIアバターが選挙運動をしたり、AI自身が立候補するケースもあった。サイバー空間では「なんでもあり」の様相を呈しているのだが、リアル空間でも興味深い事件があった。

 

中国で「シリコンマスク」が社会リスクになりつつある深刻な理由 | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)

 

 この記事が取り上げているのは江蘇省徐州市で、20件以上の盗みを働いていた男の事件。男がかぶっていたのは老人のシリコンマスクで、顔を変えての犯行だった。映画等で使われる変装用のマスクで、高いものでも50万円ほどで手に入るとある。実在の人物含め、どんな顔にもなれるというのが売り。まるきり「スパイ大作戦Mission Impossible」の世界(*1)だ。

 

        

 

 顔認証技術が普及している中国では、このように精緻なマスクを被って認証を通過すれば、非常に多くのことができてしまう。この犯人は20件の窃盗で220万円ほど盗んだとあるが、成りすました人の財産を持ち逃げすることだって可能なはずだ。労力に見合わない犯罪をしたものだと思う。

 

 しかし気になるのは、顔認証技術がこんなマスクで騙されてしまうこと。例えば顔認証のキーの一つは「眼間距離」、左右の瞳の位置関係は成人後は一生変化しないので認証のデータとして利用している。たとえマスク(に開いている目の位置)は成りすませたとしても、本当の瞳の距離を測れば異なっている公算が高い。かの国の顔認証技術は、僕の知っているものとちがうのだろうか?それともマスクで瞳の位置も変えられるのだろうか?まさかね?

 

 技術者に求められるのは、シリコンマスクを見破れる顔認証技術なのでしょうが、これもイタチごっこですね。

 

*1:このテープは自動的に消滅する - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)