今年のNHK大河ドラマ「どうする家康」では、岡崎城/浜松城のセットの奥に巨大なスクリーンがあり、映像の背景を変えることができるという。山の映像なら山城、海の映像なら海辺の城に変身させることができるのだ。このような技術を「バーチャルプロダクション」と呼び、他の映像製作でも活用され始めている。
東映、仮想ロケ地で映像制作 長時間労働とコスト減らす - 日本経済新聞 (nikkei.com)
ハリウッドでは以前から利用されていたと、この記事にある。大好きなDVDビデオ「NCIS:ネイビー犯罪捜査班」の特典映像などには製作の舞台裏が紹介されている。曰く、
・ロケの場所探しも大変
・警察、消防等の許可がいるケースも
・天候などが合わないと、契約期間が切れてしまう
なのだそうだ。この技法は、ロケに頼っていたシーンの撮影に、ある種の革命をもたらす。
東映はまず特撮シリーズなどに活用するとあるが、そのような映像なら全編CG(Computer Grafics)でもいいような気もする。またここに例示されている<スーパー戦隊>ならば、戦闘シーンは俳優が顔を出していないので、キャラクターそのものもアニメ、CG、あるいはAI映像でもいいような気がする。
「バーチャルプロダクション」を始めとするデジタル(映像)技術の導入効果は、もちろんコスト削減。加えて過酷な労働環境を改善することだと、この記事は言う。問題はここからで、労働環境改善はいいとして、雇用や報酬に影響が出るのは(いずれ)必然である。映像製作におけるコストの相当部分は、人件費なのだから。
これまでは実現が難しかったシーンを加えたストーリーライターや映像クリエータの仕事は増し、報酬は増える。一方、現場での雇用は減り、残る雇用の報酬も厳しいものになるだろう。
デジタル革命にはつきものと識者が指摘する、格差の拡大がここでも予想されます。米国俳優組合・脚本家組合の「反AIスト」と同根の抗議活動が起きるかもしれません。