Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

自治体システムの仕様統一(後編)

 自治体システムの仕様統一を2025年までに実現するため、新法と基金を用意するという話は朗報ではあるが、システム仕様に行く前に業務の方の整理が必要だというのは以前にも述べた。電子自治体を30年近くやってきて、予算も多く使いながら実感として役に立たないものになってしまっているのには理由がある。それは自治体サービスの供給側からしか物事を見ていなかったからだと思う。

 

 この種のイノベーション成功のためには、常に需要側に立って考えなくてはいけないのだ。だから今度の「統一システム」を考える前には、住民からサービスがどう見えているか、住民が理解しやすく使いやすいサービスを実現する業務はどうあるべきか、そしてようやくシステムでの実現を考える段階に来るべきなのだ。

 

 以前も紹介した「ユニバーサルメニュー普及協会」という団体では、自治体公共機関向け行政サービス標準メニュー体系を開発し普及を図っている。大手のシステムベンダーや自治体も多く名を連ねていて、「ユニバーサルメニュー」という体系を、国・自治体・企業・市民間で共有できるものに育てる努力を続けている。

 

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 協会では各自治体ごとに異なる行政サービスを調査したが、市民には分かりにくいサービスが多いことが分かった。例えば、

 

・同じサービスなのに自治体ごとに名前が違う。

・名前は似ているのだが、中身は別の制度。

・やたらに長い名前の制度。

 

 のようなものである。そこでこの団体では市民のIDを振ったように、行政サービスにもIDを振ってサービスの内容を容易に検索できるようにすることを考えた。

 

行政サービスID | 一般社団法人 ユニバーサルメニュー普及協会 (universalmenu.org)

 

 ID体系は、

 

・日本にある行政サービスを網羅していて

・制度内容を簡単に判別できる属性情報を備えていて

・制度間の関連性も分かりやすい

 

 ものとして設計されている。実際、滅多に使われない行政サービスの場合など、自治体職員でも「どうやったらいいかわからない」ものもあるという。上記のような整理がされていればIDで検索して、市民自身も自分に合ったサービスを選びやすく、自治体窓口での対応もスムースになる。

 

 システムの仕様統一の前に業務の整理、サービスの整理をすれば「誰も取り残さない電子行政」が可能になるように、僕は思います。デジタル庁での採用をお願いしたいです。