Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

「構想」はステップですよね

 先月、海上自衛隊の艦隊構成の再編が発表されている。旧来の第1~4の護衛艦隊と掃海艦隊を解体し、第1~3の水上戦群(横須賀・呉・舞鶴)と水陸両用戦機雷戦群(佐世保)に編成しなおすというもの。

 

海自新編「水上艦隊」の全容判明(最新組織図)(高橋浩祐) - エキスパート - Yahoo!ニュース

 

 1個水上戦群には、事実上の軽空母DDH1隻と、イージス艦DDG2~4隻、駆逐艦(と言っていいだろう)DD7~10隻が所属する。舞鶴の第3水上戦群にイージス艦が4隻(みょうこう・あたご・ちょうかい・あしがら)も配備されているのは、北朝鮮のミサイル対応のためかもしれない。

 

 いずれにせよ、F-35も搭載できるDDHのエアカバーのもと、DDGがミサイル等から艦隊を護り、潜水艦狩りはDDが担当する。この戦群で、シーレーン防衛や島嶼防衛、対ミサイル戦をすることになる。

 

 掃海艦隊を、水陸両用と機雷戦の両用に使えるようにしたのも重要な再編。DDH「いせ」は、強襲揚陸艦の役目も果たすだろうし、掃海戦は防御だけだが、機雷戦は攻撃もするとの意味。

 

    

 

 これは現場(軍令)での対応だが、後方(軍政)でも動きがあった。

 

小泉防衛相「4月に太平洋防衛構想室」 対中国念頭に体制検討 - 日本経済新聞

 

 中国などの太平洋に対する野心に対応するため、太平洋全体を防衛する「構想」を練る部署を新設するというのだ。このこと自身は、当然のことであり賛同できる。ただ「構想室」という名前に(誰に対してかはわからないが)遠慮が覗く。発足は「構想室」でもいいが、人員を質量ともに強化して早めに「作戦室」にしてほしい。

 

 え?「戦略室」じゃないかって?太平洋全体の防衛に関することは、戦略~作戦~戦術の区分で言うと、やっぱり作戦級。戦略はもっと大きなもののことだ。日本の企業人は軽々と「戦略」という言葉を使いすぎると、僕は思っている。

 

 太平洋戦争緒戦でフィリピン全土を制圧した「作戦」は、陸軍参謀本部で秩父宮が関わって作られたものでした。「作戦」とはこれほど大きなものも含むのです。国際関係の緊張が高まっていて、不幸なことではありますが国防のことも真剣に考えざるをえませんから。

 

シビリアンだって暴走する

 内戦続くミャンマーで、ミン・アウン・フライン将軍が大統領に就任した。民主派勢力を排除するクーデターを起こした張本人で、軍に都合のいい選挙を行った結果である(*1)。悲しいことではあるが、軍が暴走して政権を掌握したり、勝手に戦争を始めたりすることは、結構頻繁に起きる。民主主義・人権・法の支配を掲げる先進国では、このような事態を避けるため、軍隊には文民統制(シビリアン・コントロール)をかけている。

 

 ところが今回、シビリアンだって暴走することが分かった。それはもちろん米国のこと。ベトナム戦争にも行っていないトランプ大統領の命令で、まるきり国際法違反(議会にも諮っていないので国内法にも違反)の戦争を始めてしまった。

 

 そして、ひょっとすると日本でも・・・。

 

夜の紀尾井町

高市首相、自衛隊派遣と今井尚哉氏巡る報道否定 「完全な誤報」 | 毎日新聞

 

 政府は必死に打ち消しているが、高市総理と今井参与の間で中東への自衛隊派遣を巡って衝突があったと伝えられている。停戦、いや終戦が確認されてから、機雷掃海や復興支援のために自衛隊を派遣することは、十分に考えられる。しかし、ネタニヤフ政権が矛を収めるはずもない現場に、自衛隊を出すなど狂気の沙汰。憲法が、自衛隊法が・・・という以前の問題である。

 

 もし高市総理がそんなことを言い出したとしたら、これもシビリアンの暴走と言えるだろう。米国と違って、日本の官邸組織は暴走を許さなかった。当然のこととはいえ、評価されてしかるべきである。

 

 KGB出身の大統領がウクライナ侵攻をあきらめていないロシアはともかく、世界3位の核戦力を持つ中国はどうだろうか?習大人は台湾統一を悲願としながらも、米軍が手薄になった東アジアでコトを構えようとはしていない。中央軍事委員や高級将校を多数粛清してしまったので、戦力をうまく動かせないのかもしれないが、今のところシビリアン・コントロールが効いているしシビリアン(共産党中央)が暴走する気配もない。

 

 シビリアンの暴走を止める意味での「シビリアン・コントロール」、さてどうやりますかね。

 

*1:ミャンマー大統領が就任演説、ASEANとの関係正常化に意欲 | ロイター

不祥事、権力闘争、それともわがまま?

 いまやG2と考えてもいい、米中両大国。米国のソフトパワーが地に堕ち、中国の独裁政権の所業が目立たなくなってきた。むしろ中国の方が正論を言っているようだ。例えば、

 

米国:日中韓などホルムズ海峡に依存している国は力を貸せ

中国:米国らの国際法違反の軍事行動が原因、直ちに停戦せよ

 

 という次第。どちらが、自由・人権・法と秩序の守護者なのか迷ってしまう。ところがこの両国、政権内部が同じようにゴタつく奇妙な相似形を見せている。まず米国だが、

 

・エプスティーン文書問題などで大統領が怒り、ボンディ司法長官がクビに(*1)

・ラトニック商務長官ら、他の数人の閣僚も危ういとの報道も

・恐らくイラン作戦での齟齬だろう、国防長官が陸軍参謀総長に退任を迫る(*2)

 

 となった。大国イランを相手の戦争中に、精々大尉クラスのヘグセスごときが、4ツ星の将軍をクビにするなど、言語道断である。

 

京都「金福寺」の庭園

 次に中国だが、昨年の内に中央軍事委員会のメンバー7人のうちの5人が失脚(物理的に消えてしまった!)して、かの重要な委員会は習大人ともう一人だけになっていた。その上2月の全人代(日本の国会に相当)を始める前に、高官19人を新たにクビにしている(*3)。そして、今月に入って政治局員が一人、汚職を疑われて消えた(*4)。

 

 直接的な原因はいろいろあるだろう。個別に見れば、不祥事があったかもしれない、見えにくい権力闘争の一環かもしれない。極端な話、独裁者のわがままかもしれないのだ。

 

 大きな経済力や戦力、あまつさえ大きな核のボタンを持っている人たちが、わがままを通したいと念じていれば不測の事態が起きかねません。そんなことが起きないように、祈るしかないようです。

 

*1:トランプ氏、ボンディ司法長官を解任-エプスタイン問題の対応に不満 - Bloomberg

*2:ヘグセス米国防長官、陸軍参謀総長に即時退任を命じる - CNN.co.jp

*3:中国、軍幹部9人含む高官19人を解任 全人代の直前に - BBCニュース

*4:習指導部メンバーが失脚 馬政治局員、「重大な規律違反」―中国:時事ドットコム

座り込んだ3億ドルのアヒル

 英米の軍事スリラーを読んでいると、時折「敵はいつでも自由に時間を選んで攻撃できるが、その時こちらは座り込んだアヒルも同然だ」との表現を目にする。「Sitting Duck」というのは、まるきり無防備なものという意味だろう。

 

 冷戦が終わった時、米国政府は空軍の縮小を考えたという。パイロットひとりを養成するのに、200万ドルもかかるのだ。カネがかかるだけでなく、戦場に居続けられないので、占領の役に立たない、基地にいるところを襲われたらとても脆いという欠点がある(*1)。その欠点が、イラン戦争で露呈した事件があった。

 

イランによる攻撃で米空軍の早期警戒管制機「E3セントリー」が破壊 写真が捉えた大破の状態 - CNN.co.jp

 

 航空戦術の要である早期警戒管制機AWACSが、地上で破壊されたという報道である。この機種「E3セントリー」は、1機3億ドルほどもする高価な機体だ。

 

    

 

 イランのミサイル(含むドローン)の命中精度が上がっているとの情報はあったが、座り込んだ3億ドルのアヒルを仕留められるほどになっているとは驚いた。推測だが、純粋に技術的な精度向上ではなく、基地周辺のHUMINT(要するにスパイ)が絡んでいるのだろう。そうだとしても、米軍の危機管理の甘さは非難されるべきだ。

 

 もう2年も前のことになるが、ウクライナ戦線でロシアがAWACSアントノフ50を撃墜され、指揮機イリューシン20Mを撃破されるという失態を演じたことがあった(*2)。この時はロシア空軍に大きな問題(未熟・怠慢・厭戦)があると思ったのだが、米軍にも同様の問題は発生しているのではなかろうか?

 

 とにかく戦争にはおカネがかかります。ヘグセス国防長官は追加で2,000億ドルの軍事費を要求しているようですが、納税者はそれを納得しますかね。

 

*1:戦略・作戦・戦術上の圧倒的戦力 - 新城彰の本棚

*2:早期警戒管制機(AWACS)撃墜さる! - Cyber NINJA、只今参上

不発・誤爆・価格・在庫が悩み

 イランへの米国・イスラエルの攻撃が始まって、6週間になろうとしている。トランプ大統領はいい加減に手を引きたいのだろうが、ハルマゲドンを標榜するヘグセス長官は攻撃を続けたがっている。なにより火元である、ネタニヤフ首相が矛を収めるはずもない。

 

 米軍の主な攻撃力は、空爆とミサイルによるもの。イランの防空体制を昨年6月にほぼ破壊しているので、迎撃されることはあまりない。洋上から水上艦艇(ひょっとして潜水艦からも?)が発射する巡航ミサイルは、戦果を挙げているようだがいくつかの課題もある。

 

1)不発問題

 今年になって、シリアで3発の爆発しなかった弾頭が見つかったと<Forbes誌>が伝えている(*1)。2018年に米軍はシリアに対し、66発のトマホークを放っておりその一部だろう。

 

    

 

2)誤爆問題

 誤差数メートルなのに、小学校に着弾して多くの子供を殺している。

 

3)価格問題

 1発あたり、弾頭とキャニスターで合計200万ドル以上かかる。

 

4)在庫問題

 すでに1,000発ほど撃ったと伝えられるが、年間の生産量は80発ほど。12年分をこの1カ月余りで消費してしまった。

 

 トマホーク(RGM-109/UGM-109:先住民の斧の意)は1980年代に配備された艦対地ミサイルで、数次の改良は経ているがすでに半世紀近く運用されている。これまでの消費量を調べてみると最も多かったのが、2003年のイラク攻撃で802発。二番目(1998年325発)・三番目(1991年288発)もイラクが相手だった。イラン相手で新記録達成だが、どこまで伸びるのか伸ばせるのかはわからない。

 

 先月、海上自衛隊のDDG176「ちょうかい」がトマホークを発射可能な仕様に改装された(*2)そうです。いわゆる「反撃能力」の獲得ですが、撃つ弾はあるのでしょうか?そして他の3問題も・・・。

 

*1:「不発」相次ぐトマホーク コストに見合わぬ延命、米国が抱える巡航ミサイル問題 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

*2:護衛艦「ちょうかい」の改修完了、米国製巡航ミサイル「トマホーク」の発射可能に : 読売新聞