Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

殺意と被害者の心理をどう証明する?

 これぞ<ブラック企業>と報道を見ていて思うのだが、従業員を苛め抜いて自殺と見せかけて殺したという事件である。そもそも殺そうとして雇ったのかもしれないとすら思う。

 

【独自】電車と衝突させ同僚男性殺害疑い 4人逮捕、長期間繰り返し暴行か | 共同通信

 

 別の報道では「川に飛び込むのは嫌だが、電車なら飛び込める」と被害者が語っているドライブレコーダーの映像があるともいう。一瞬「困窮した人を雇用して、従業員として保険を掛けた保険金殺人か」と思ったが、動機については後の報道を待ちたい。

 

 僕が注目したのは、この件の殺人事件としての立件はできるのだろうかということ。ドラレコ映像が証拠として認められれば、自殺ほう助は成り立つだろうが、こんな罪はないと思うが「自殺強制」くらいまでは届くかなという感覚。殺人を立証するのは、とても難しいと思う。

 

横浜港署前のオブジェ

 虐待して洗脳し、自分は生きている意味がない人間で、生きているだけでもつらい・・・と思わせ自殺を仕向けること自体は、不可能ではない。しかしいくら虐めても自殺を強制できたとの証拠は、どうやって積み上げるのだろうか?

 

 検事出身の自民党参議院議員だった佐々木知子氏の「日本の司法文化*1」によれば、やや古いデータ(*2)だが、

 

・日本の殺人事件は、人口比で米国の15%

・検挙率は95%

・有罪判決率は99.9%

 

 だとある。そんな司法界が、殺人容疑での逮捕令状を出したのだから、ある程度立件できる見通しがあったと思われる。セコい話だが、自殺ほう助容疑で逮捕すれば、殺人事件の検挙率や有罪判決率ダウンの恐れはないのだから。

 

 殺人事件という重大案件ですから、これも裁判員裁判の対象になり得ます。検察はどのように、殺意と被害者の心理を立証するのでしょうか?これに対して弁護側はどのような反論をするのでしょうか?ひょっとすると裁判員の心理を揺さぶる法廷戦術がみられるかもしれないと思いますから、推移を見守りたいと思います。

 

*1:超精密司法の国の検察 - 新城彰の本棚

*2:2000年発表ゆえ裁判員裁判の事例は入っていない