「FOIP対一帯一路」の闘争の一環として、太平洋の海底(光)ケーブルの争奪戦については以前も取り上げた。昨年7月には、チリ政府が、
・チリから直接上海・香港につなぐ中国政府案
のうち後者を選んでいる。シドニーから東京はすでに繋がっているので、南米からのルートも「QUAD」側と連携することになったわけだ。
今回は、南太平洋のミクロネシア連邦からキリバスにいたる海底ケーブル敷設計画の入札について、Huawei系の中国企業が落札すると見られていたが、それに「待った」がかかったというもの。
太平洋の光ケーブル、中国企業の入札無効 日米豪懸念で: 日本経済新聞 (nikkei.com)
この記事によれば、米豪間の連携に楔を打ち込もうとするものだと、日米豪諸国が懸念をしめしていたらしい。仮に中国企業がこの地域に海底ケーブルを敷けば、そこを流れる通信が「国家情報法」で中国政府に知られてしまうリスクがあった。入札そのものが中止になって、ナウルやキリバスなどの国への光ファイバ接続は、しばらくお預けということになる。
歴史は繰り返すというか、3/4世紀前の日本も米豪遮断の「FS作戦」を実行したことがある。ソロモン諸島からフィジー・サモアを攻略することで、米豪間の連絡線を断とうとしたのだ。今回は習大人が南太平洋への足掛かりをつけ、米豪遮断作戦に出たものを、FOIP側が防いだという印象だ。
この記事にも名前の出てくる慶応大学の土屋教授は、海底ケーブルがお好き。自ら陸揚げ地点を探して「フィールド・ワーク」をされるという。教授の近著「Cyber Great Game」では、サイバー空間での安全保障論がヴィヴィッドに展開されている。
サイバー戦争への覚悟 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
教授によれば海底ケーブルを狙う破壊工作も、十分あり得るとのこと。デジタル経済の世界では最重要インフラとなった海底ケーブルを、支配されないだけではなくどう守るかも、サイバーセキュリティ業界の大課題である。
かつて日本軍が水上機基地を置いたツラギ島は現在ソロモン諸島という国の所属で、中国が租借しているとの情報もある。ツラギ島の対岸はガダルカナル島、ソロモン諸島の首都ホニアラがある。ここから米豪遮断を狙うというなら、地政学的には正しいのかもしれませんがね。