Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

インフラ保守と新技術の相性(前編)

 日本には高度成長期に建設・整備された膨大な社会インフラがあり、それらの多くが寿命を迎えようとしている。橋梁やトンネルの維持保守にはかなりの資源(人員・予算・時間)が必要で、今後それらの確保に十分な見通しがあるわけではない。国交省では2022年の「笹子トンネル事故から10周年」までに、将来への見通しを立てようといろいろな活動をしている。
 
 まず予算だが、今回の第三次補正には「COVID-19」対策と直接関係がないと批判もあった「国土強靭化:3.1兆円」がふくまれていた。しかもこの補正から来年度予算以降は、これまで予算措置規則上難しかった「予防保守」に予算を充てることが可能になるという。
 
 次に人員だが、デジタル等の新技術を使って効率化したり熟練者でなくても作業を可能にする検討や実証が進んでいるという。今回その「新技術導入促進」の関係者と意見交換をすることができた。まず各自治体で行われた、成功事例の紹介があった。
 
◆3次元点群データのオープン化と道路管理者等での活用
◆水面下の岸壁状況を計測する音響計測カメラARISの活用
◆ヒートライナー工法で下水道管を補修しながら廃熱利用
◆AIを利用した小規模橋梁点検の実証
◆橋梁補修を市職員で行える工法の確立
 
 いずれにも自治体担当部署の積極的な活動が見られるが、その陰でこの何十倍ものトライアルが不首尾に終わっていることも事実である。成功事例の情報共有はいいとして、他の自治体への横展開はどうすればいいかの議論になった。
 

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 成功事例を見てみると、熱意ある人・知見のある人・限度を心得ている人がいて、達成できた例ばかり。僕など「あ、いい事例だな」と感心していたのだが、現場タタキアゲの専門家によれば「貴方が技術の使い方を心得ておられるからいいものの、危ない面も感じる」とのこと。要は「鵜の真似をする烏」だと、事故につながりかねないよということらしい。
 
 
 その「技術の使い方の心得」のある人によれば、ベンダーのもってくる技術は最初は使い物にならない。要するに「Battle Proof」されていないということ。現場の保守はこういうものだというアナログなノウハウを入れ込んで、現場側も理解をしてさらにノウハウを入れ込んで、やっと(その人達にだけ)使える物になるという。
 
<続く>