Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

脱紙処理、25年前の記憶(後編)

 銀行のバックヤードを改革して、脱紙処理により真の情報産業になってもらう企みは、僕の失敗事例のひとつになった。「金融Big-Bang」の教えに従い、僕は銀行に情報産業になってもらいたかったのだ。

 

 もう忘れかけていたその企みのことを、思い出させてくれる記事があった。

 

大手銀行、税収納を電子化 年600億円のコスト圧縮へ: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 25年前にやりたかったことを、銀行業界が「QRコード」を税収納帳票に印刷することで解決してくれそうだ。この記事を読んで、銀行と自治体の関係が少し変わってきたなと感じた。

 

 昔収納帳票を変えることが出来なかったのは、自治体側が強かったから。銀行はその自治体の「指定金融機関」になると、自治体のお財布口座を持つことができた。これは当座預金なので金利はつかない。銀行側は認めないだろうが、カネには色はなく当座預金金利相当分のメリットは銀行が受けられた。

 

 だから各銀行は「指定金融機関」にしてもらいたくて、帳票処理などの「役務提供」をしていたわけだ。しかし25年前の時点で自治体の財政も苦しくなり、当座預金にお金を遊ばせておく余裕がなくなりつつあった。入金即引き下ろすので、銀行のメリットがなくなってしまう。

 

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 金利相当分は入らないは、役務提供は続くはで銀行は困り始めていた。それでも自治体の「指定金」という看板は下ろしたくない。平成の大合併自治位の数も減り、デメリットも減ったこともあって、しばらくは不平等な関係が続いた。しかしここ数年地銀レベルの合併も始まり、吸収した銀行としては新しい「指定金の重荷」など背負いたくない。指定金融機関を降りたいという話も出始めたのだと思う。降りられたら代わりの「指定金」が見つからない限り、自治体は徴税ができなくなって破綻してしまう・・・。

 

 25年前は自治体側が圧倒的に強かった力関係、銀行も(まずはメガですが)強くなったと思われる。平等の関係になって、フェアな交渉ができDXにつながったいい事例である。今もDXの事例は探し続けているので、今度関係者に本件の経緯を聞いてみたいものだ。

 

 デジタル経済の発展には、技術以上に環境が障害になることが多いです。25年前の失敗、ほろ苦く思い出しました。