Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

小選挙区制のダイナミズム

 香港の区議会議員選挙が「民主派」の地滑り的圧勝に終わり、世界は息を飲んだ。今春に香港から中国本土への逃亡犯(容疑者?)引き渡しを容易にする条例改正案が公表されて、これに反対する市民のデモが徐々に勢いを増していった。ついには200万人規模になったデモ、一部は暴徒化し香港全体の治安も悪化した。

 

 上記法案はお流れになったのだが、それでも火のついてしまった市民の怒りは収まらない。大学への立てこもりなど、民主化要求の強化にまで広がっていった。そんな中、習政権の意をくんだ香港当局は、「デモは一部の過激な人たちによるもの。サイレントマジョリティ親中派だ」と海外メディアに伝えていた。

 

 しかし先月末の区議会議員選挙では、この見解が間違いだったことが明確になってしまった。選挙前7対3で親中派優勢だった議席数が、2対8に逆転されてしまったのだ。ただ得票率を見ると、4対6程度しかない。6割の得票率で8割の議席を得られる「小選挙区制」のゆえである。

 

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 また投票率が40%から70%超にハネ上がったことの影響も大きい。増えた30%の大半は「民主派」と見られ、選挙に行っていない「サイレント層」が危機感を持って投票所に足を運んだのだろう。香港当局とその背後にいる習政権は、この結果に(正直)驚いたという。

 

 「小選挙区制」は政権交代が起きやすい制度として日本でも衆議院議員選挙に導入(比例代表を併用)されているが、一時期の民主党政権時代を生んで以降、政権交代は発生していない。だからそのダイナミズムを感じることはあまりなかったのだが、今回香港の区議会議員選挙がそれを証明してくれた。

 

 とはいえ区議会議員は香港の議会等の中で最下層にあたる。これより上位の人たちを選ぶ選挙では、当局や本土からの制約で「民主派」の立候補そのものが難しいとも聞く。香港の民主化強化が、すぐに成るわけではない。

 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58432

 

 中国当局としては、新疆ウィグルの事変ほどの危機感を香港人は持っていなかったのかもしれない。しかしこの結果で戦略の見直しを迫られるだろう。トランプ先生は中国政府の圧力をハネ返して、「香港人権・民主主義法案」に署名し同法は成立した。米国ははっきり香港(民主派)側についたわけだ。このトレンドは、来年1月の台湾総統選挙にも影響するだろう。当面、中国本土の周辺から目を離すことはできませんね。