Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

アナログ無人兵器の末裔

 先週紹介したウクライナ軍のミニ無人戦車などはその典型だが、AI/ロボット技術の発展で各種の無人兵器(ドローン)が戦場に現れている。しかし、デジタル技術がなかった時代にも類似の兵器はあった。

 

 独ソ戦で、ソ連軍はトラクターの下で餌をもらう習慣をつけた犬に地雷を付け、ドイツ軍戦車の下で自爆させようとしたことがある(*1)。このほか。鳩を使ったアナログ通信手段もWWⅡまでは普通に行われていた。

 

 無人兵器というよりは生物兵器というべきかもしれないが、このような例は数限りない。そして21世紀になって、その末裔とも言うべきものが現れた。

 

イラン、「機雷イルカ」投入検討? 米艦艇攻撃用―米紙報道:時事ドットコム

 

ボスポラス海峡にて

 ハイテク兵器では米軍に敵わないイラン海軍(消滅したはずだが・・・)は、イルカを使って機雷戦を仕掛け米軍艦艇を狙うという。確かにいるかは知能の高い哺乳類で、訓練すればかなりのことができるとされる。そういえば下田海中水族館のイルカの芸はすごい。

 

 SF作家アーサー・C・クラークは、「イルカの島*2」で、コンピュータ(今でいうAI)がイルカの会話を解読したり、脳に電極を入れて行動を制御したりする話を書いた。ハイテクの世界ではそれは可能になりつつあるだろうし、ローテクでもイルカを戦力にすることは出来そうだ。ロシアがイルカを使ってスパイしていたという説(*3)もある。場所によっては、海底ケーブルへの工作にも使えるかもしれない。

 

 アナログ&デジタル両面の無人兵器、これからもメディアを騒がせることになるでしょうね。不幸なことではありますが・・・。

 

*1:犬に“特攻”をさせた「地雷犬」の悲劇 “戦車を破壊してこい” その愚かな顛末 | 乗りものニュース

*2:Great Barrier Reef, 2020 - 新城彰の本棚

*3:ロシアの「スパイ」イルカ、「射殺」されたと保護団体 ノルウェー沖で先月に死骸見つかる - BBCニュース

無敵!無人戦車部隊登場

 イラン戦争に気をとられているが、中東以外でも戦争は続いている。イランの核物質につき手伝えること(*1)があるとプーチン大統領がトランプ大統領に電話したところ、「それよりウクライナ戦争を早くやめろ」と言われてしまったらしい。

 

 そのウクライナ戦線は、長い膠着状態が続いている。ロシア軍が人海戦術で地歩を得ているとの報道もあるが、ウクライナは無人戦車とも呼ぶべき地上ドローン(だけ)で拠点を制圧したと言っている。

 

「ロボットは血を流さない」 ウクライナ軍、歩兵の代わりに無人兵器を投入 戦場で優位に - CNN.co.jp

 

 この兵器かどうかは不明だが、ウクライナの無人兵器が射撃し移動する映像を見た。12.7mm機銃1門を搭載したミニ戦車で、かつてナチスドイツの突撃工兵が使っていた<Sd.Kfz.302:通称ゴリアテ>に似た車体に、機関銃座を載せたような形状である。

 

靖国神社「遊就館」の展示

 <ゴリアテ>は自走して的中で自爆する、昨今のドローンの闘い方の先駆者であった。今回活躍したウクライナ軍のミニ無人戦車は、十分な火力を持っている。火力で言えば、<Sd.Kfz.101:通称Ⅰ号戦車>と同等である。

 

■Ⅰ号戦車の諸元

・重量 5.4トン

・全長4m、全幅2m、全高1.7m

・速度 37km/h

・乗員 2名

・武装 7.92mm機銃2門

 

 こんなものに襲われたら、有力な対戦車兵器を持たない歩兵など、逃げ切れなければ降伏するしかない。ましてミニ戦車は的が小さく対戦車兵器も当たりにくいし、仮に破壊されても人的損失はない。

 

 戦争は(不幸なことだが)人類の英知を開花させる。あっという間に役立つ兵器が出来、実戦で改良されてより効率的に(人を殺せるように)なる。何度かウクライナの地は「ドローン兵器の実験場」だと申し上げたが、5年目に入ったこの戦場でのドローンの進歩は目を見張るものがある。

 

 日本の自衛隊も人手不足ですから、この種の兵器をどんどん導入すべきですよね。人的被害を受けにくい軍隊というのは、このような国際情勢の緊張下では非常に魅力的です。

 

*1:多分核物質をロシアで預かってもいいと言いたかったのだろう

一味違う81年目の「対独戦勝記念日」

 明日は、WWⅡにおいてドイツが連合国に降伏した日。6月6日のノルマンディー上陸作戦の記念日以上に、ロシアを含めた欧州にとって意義ある日だ。昨年が80周年の節目、プーチン大統領はウクライナ戦線の戦況を気にしながらも、習大人を招くなど精一杯のセレモニーをして見せた。ただし例年ほどの大パレードが出来なかったのは、主な兵器を前線に出してしまっていたからだ。

 

 今年もプーチン大統領はセレモニーはやりたい。しかし最近長距離兵器を駆使するようになったウクライナ軍に狙われてはたまらないので、一時停戦を申し出ている(*1)。現時点では、ウクライナ側が同意するかどうか不透明だ。

 

 すでにウクライナ戦争は5年目を迎え、WWⅡの独ソ戦の期間を越えた。英米(特に米国)から膨大な軍事支援を受けながら、ソ連は多大の犠牲者を出してようやく勝利をつかんだ。戦死・戦病死は1,500万人にも達したという。

 

フランクフルトの街角

 その強敵に勝った祝祭日なのだが、ロシア自身今は苦境にある。原油高とはいえ経済は低迷、インターネット遮断などが不評で大統領の支持率は低下傾向、プーチン氏はクーデターに怯えているとの報道もあった。そしてもうひとつ、ロシアにとっては朗報なのかどうか不明なニュースが飛び込んできた。それは、在独米軍の削減。

 

ドイツ首相、トランプ氏批判と在独米軍削減「関連性ない」 | ロイター

 

 メルツ首相がどう言おうと、イラン戦争について批判されたのにキレたトランプ大統領がメルツ首相にしっぺ返しをしようとしているのだ。メルツ首相はこれを冷静に受け止め、自国の戦力強化に拍車をかけることになる。苦境にある自動車産業を兵器産業に転化する動きも顕著だ(*2)。

 

 スペインやハンガリーの政治状況を見ても、米国と距離を置けば支持率が上がる傾向がはっきりしています。ドイツでも中道勢力が軍備増強に積極的になって支持を回復、米国抜きの対ロシア戦の準備を進める可能性が高くなってきました。

 

*1:「停戦宣言」期間にずれ 対独戦勝記念日に合わせてロシアとウクライナ、戦闘継続の可能性 - 産経ニュース

*2:兵器工場に生まれ変わるドイツ、自動車低迷で - WSJ

三次元海洋地図の重要性

 中国が米国を上回る覇権国になろうとしていることは明白で、それに至るステップとして、台湾~第一列島線、日本を含む第二列島線をわがものとし、太平洋を中央で米国と分ける戦略を進めている。

 

 そのためには、中国沿岸から南シナ海、東シナ海、さらに日本列島周辺や果てはハワイ沖まで、海の状態を知らなくてはならない。偵察衛星や航空測量などによって地形や建造物がわかる陸地と違い、海底の状況は容易に探知できない。しかし戦場となるかもしれない場所の深度はどうなのか、海底の状況はどうなのか、海流はどうなっているのかなどを知らずに、作戦計画など立てられるはずもない。では中国海軍は何をしているのか?<Reuters誌>のこの記事で、一端を知ることができる。

 

焦点:大規模海底マッピング進める中国、対米「潜水艦戦」に備え | ロイター

 

    

 

 よく、日本のEEZ内に中国の測量船が入ってきたとの報道がある。海上保安庁や海上自衛隊が近くで監視をし、不審な行動があれば退去を求めている。日本は地表面積では小さな国だが、海洋のEEZまで含めた面積を足して比較すれば、世界有数の大きな国家である。その海域の状況を、中国の測量船は知ろうとしているのだ。

 

 例えば日本をデジタル面で封鎖するには、海外とのデータ交流のほとんどを担っている海底ケーブルを切断すればいい。ケーブルの位置も重要な戦略情報だ。もちろん潜水艦の活動には、精緻な三次元海洋地図が必要だ。原子力推進を得て潜水艦は長期間潜航したまま活動できるようになり、

 

無限エネルギーを得た海の忍者 - 新城彰の本棚

 

 にあるような多様な任務をこなせるようになっている。冷戦期には、ソ連の戦略原潜(SSBN)1隻に米国の戦術原潜(SSN)が1隻張り付いて監視する体制が整っていた。今監視の対象は中国の原潜にも広がっているだろうから、時々良く分からない事案も起きる。例えば2021年に南シナ海で、SSN<コネチカット>が損傷する事件があった。真相は不明だが、僕は中国の潜水艦との間になんらかの衝突(戦闘?)があったのでは(*1)と疑っている。

 

 今すぐ戦端は開かなくても、中国軍も調べるべきことは調べているようですね。

 

*1:南シナ海での海戦? - Cyber NINJA、只今参上

兵站を軽視した者に勝利は来ない

 パキスタンの仲介で停戦協議は行われる模様だが、世界が希求する本当の意味のホルムズ海峡解放への道筋は見えてこない。この海峡に範囲を限定しても、米軍の海空での戦力は圧倒的である。それでも海峡封鎖が出来てしまうのが、非対称戦の恐ろしいところ。

 

 加えて、紅海の南の出口であるバブ・エル・マンデル海峡を、イランの息のかかった武装勢力フーシ派が封鎖すると言い始めた。ペルシア湾からパイプラインで紅海側に送られた原油を海上輸送し始めているが、その出口を閉じられてはたまらない。地中海にいた「ジェラルド・フォード」を基幹とする空母機動部隊は、スエズ運河を抜けて紅海に入ったと伝えられる(*1)。

 

 この空母、実は昨年からカリブ海に展開していて、ベネズエラの麻薬船狩りなど海上封鎖に従事、マドゥロ大統領夫妻の拘束にも関わっていた。作戦終了後、地中海に向かったので最長の展開記録を更新してしまった。

 

    

 

 長く洋上にいれば装備にガタも来るし、兵員の士気も落ちる。火災を起こして一旦戦線を離脱、修理や整備を経て戻ってきたものの、恐らく戦力的には限界だろう。

 

 もう1隻、アラビア海の南に展開している「エイブラハム・リンカーン」の状況はどうか?こちらも、士気は低いようで、こんな記事が載るようになった。

 

「ひどい光景」…イランまで嘲笑した米軍兵士の「衝撃的なお粗末給食」 | Joongang Ilbo | 中央日報

 

 乗組員が家族あてに送った写真には、とても米軍の食事とは思えない貧弱なものが写っていた。これではどちらの軍隊が経済制裁されている国のモノか、分からないほどだ。主な原因をこの記事は、米軍の資金枯渇だと言っている。そういえば、まだ2026年度予算が成立していなかったね。

 

 軍事において、素人は戦略を語り、プロは兵站を語ると言います。強大な軍事力を持ちながら兵站で敗れ去ったのは、ナポレオンもヒトラーも同じ。彼らに比肩できるトランプ・ヘグセス軍ではもちろんありませんが、闘いの帰趨は見えてきたようです。

 

*1:トランプ氏の軍事的野望の先頭に立つ米空母ジェラルド・フォード、最長展開記録を更新へ(1/2) - CNN.co.jp

*2:戦争という仕事の9割 - 新城彰の本棚