最初にこの名前「サイバーセキュリティ政策会議」と言われて、何のことかわからなかった。話し相手は警察庁の人なので、警察にもそんな会議があるのですか?と間抜けた質問をしてしまった。どこの省庁にも、また民間でも団体やシンクタンク主催ならいくらでもありそうな名前だったからだ。聞くと、前身の「総合セキュリティ対策会議」から20余年続いているという。位置づけは、警察庁の「サイバーセキュリティ・情報化審議官」の私的諮問機関である。
委員長は東京都立大の前田教授、以下15名ほどの委員から成っていて、年に一度報告書を提出して公表している。昨年度は「生活様式の変化等に伴うサイバー空間の新たな脅威に対処するための官民連携の更なる推進」という報告書が出ている。
目的としては、昨今のサイバー空間での脅威の増加(コロナ禍による顕在化・犯罪の悪質化や深刻化・国家の関与が疑われる件)に対して「公共空間の安全性」を確保しようというもの。具体的には、
・犯行主体の特定を通じた犯罪対策、安全保障
⇒ 捜査手法の研究、合理化やアトリビューション能力の向上等
・健全なサイバー空間の実現に向けた各主体の取組
⇒ 事業者・個人のリテラシー向上、専門家の支援、公的機関の情報発信等
・安全性確保に向けた取り組みの実効性を担保する基盤や観点
⇒ 通信インフラの強化、不適切なSMSの遮断、SIM契約の本人確認強化等
の施策方針が挙げられていた。今年はFBIのサイバー関連の活躍が目立つ、「コロニアル・パイプライン」の事件では身代金のかなりの部分を奪還しているし、麻薬組織摘発は1年半をかけたサイバー囮捜査の成果だ。ここに挙げられた方針は、日本の警察もその方向に向かっているようにも読める。
ところで先日報道のあった「サイバー局」の設置はどうなるのと聞くと、局の設置というのは同庁としては一大事なのだという。かつて「生活安全局」を作った時は、警察組織のコンセプトを大きく変えたと彼は言う。それまでは「犯人を捕まえることを通じて治安を守る」だったが、同局設置は「市民の生活を直接守る」ことに意識を変えさせるものだった。
今年度の「サイバーセキュリティ政策会議」の議論も、リアル&サイバー双方で市民を守る警察組織への変革に繋がればいいなと思いました。