菅政権が日本学術会議への推薦人の中から6名の学者を外したことで、野党や一部メディアから非難の声が上がっている。曰く「政治の学会へのあからさまな介入」だとか、「政見に都合の悪いことには背を向けるのか」などという。ただ、僕は関連の報道のおかげで日本学術会議について教えてもらえたことがある。
・構成員が200名もいる。
・構成員は終身年金をもらえる。
いわば学者先生の「天下り先」か、「上がりポスト」に見える。それが政府機関に一つとして存在し、税金で運営されているのだから驚きである。納税者は学術会議そのものについて、もっと知るべきだ。
それというのも、僕自身はこの団体には苦しめられた思い出しかないからだ。最初は20年ほど前のこと。サイバーセキュリティ技術の研究について、大学との共同を考えていた時、有力な先生たちがなかなか乗ってきてくれない。理由を突き詰めていくと、日本学術会議が「軍事的安全保障に関する検討」を繰り返し出していて、戦争に係る研究に枷をはめていることが分かった。
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/gunjianzen/index.html
確かに日本は日中戦争から太平洋戦争を起こし、諸外国に被害を与えただけでなく自らも大きな傷を負った。それを反省しての現行憲法であり、上記声明であることは理解できる。しかし戦争をしないことと、戦争を仕掛けられた場合に国民の生命・身体・財産や国土を守らないということは関係ない。防御戦闘のための能力の整備や研究開発を行わないのは考えられない。
今や軍事行動の80%はサイバー空間で行われているという有識者もいるくらいで、20年前の僕たちはサイバーセキュリティ研究を急ごうとしていた。それを日本学術会議の「声明」によってスローダウンさせられたのは苦い思い出。
もう一つは10年ほど前、産業界が長期低迷で大学への委託研究費などを削減していたから大学側は新しいスポンサーを探していた。そこに名乗りを上げたのは防衛省、ABC兵器などからの防御研究を委託しようとしたのだが、これも上記「声明」に阻まれた。
一部メディアは「政治権力の学界への介入」と非難するが、僕に言わせれば70余年にわたって「学界が政治に介入し、年金まで得ていた」のではないか。日本学術会議の実態、今後の議論で種々白日の下にさらされることを願います。