あっという間の崩壊だった。親子2代にわたって、50年間シリアに君臨していたアサド独裁政権が終わりを告げた。北部アレッポの奪回から、2週間足らずでダマスカスに反政府軍が突入している。
報道を見ていると、ロシアやヒズボラの支援を受けていた政府軍は、ろくすっぽ戦うことなく独裁者を見捨てた形だ。かつてアフガニスタンで、ガニ大統領の政府が崩壊したのに似ている。違うのは、ガニは独裁者でなかったこと、支えていたのが米国だったことくらいかもしれない。
2013年に「アラブの春」がシリアにも飛び火し、民主化運動が激しくなった。アサド大統領は徹底的に民主派勢力を弾圧し、特に反政府活動が激しかったイドリブ県では自国民に化学兵器を使うという、ヒトラーやスターリンもしなかった暴挙に出ている。

北から南から、複数の反政府勢力がダマスカスを「解放」し、アサド大統領は辞任してロシア軍基地から家族とともにモスクワに亡命した(*1)。しかしこれで「春」が来たわけではない。トルコが支援する勢力、米国が支援するクルド系、さらに南からの人たち・・・だれが主導権をとるのか、新政府はどうなるのか、まったく見通せない。しばらくはカオス状態であり、国際的に認められる国になる日は遠い。
また残された問題は、ロシアが唯一地中海に置く空軍/海軍基地(*2)の扱いだ。反政府軍がこれを排除しようとすれば、ロシアは核兵器を含む全力で防ごうとするだろう。もしこれらを失えば、ロシアは(今もめているジョージア含め)南方の防壁を失ってしまう。
もうひとつ、独裁者の末路があっけないことを「北の将軍様」もご覧になったことと存じます。焦って何かをなさらなければいいのですが・・・。
*1:シリア政権崩壊、アサド大統領はモスクワ到着-ロシアに亡命 - Bloomberg
*2:フメイミム空軍基地/タルトゥース軍港