サイバー空間には国境がなく、リアル法(有体物法)でカバーできておらず無法地帯だという話は、何度か紹介している。じゃあ国際社会は手をこまねいて見ているだけかと言うと、そうでもないらしい。先日紹介した「日米サイバー演習」のような連携(これはインド太平洋地域の各国に向けた応援メッセージでもある)だけでなく、「日米サイバー対話」のような政府間会合もいくつか傍聴させてもらったことがある。
先月国連のOEWG(Open Ended Working Group)が、サイバー空間での規範を含めた合意承認レポートを出版した。国連の名の下にこのような文書が公表されるのは初めてだ。
このような会合は他にないのかなと思っていたら、政府でサイバーセキュリティの国際連携・国際協力に関わっている人から、話を聞く機会があった。彼によると、日本政府は「国際社会の平和・安定及び我が国の安全保障への寄与」を目的として、3項目の実効策を挙げている。
・自由、公正かつ安全なサイバー空間の堅持
・我が国の防御力・抑止力・状況把握力の強化
・国際的な連携・協力
である。最初の項目の例としては「国連サイバー政府専門家会合(UNGGE)」というものがある。2010年から米国と少数の国の専門家が集まってサイバー空間の状況や課題、対応を議論しているのだが、日本政府も参加しているという。
サイバー空間においても既存の国際法が適用されることを確認し、国家の責任ある行動としての規範を示して従うよう勧告しているという。ただこの場は限定された国だけのものなので、もっと広く参加国を集めようという事で出来上がったのが、上記OEWGだと彼は言う。それを呼び掛けたのはロシアだったそうで、中国も参加している。2018年末にスタートして、
・脅威認識
・責任ある国家の行動規範
・信頼醸成措置
・能力構築
・ICT技術における国際法の適用
・恒久的な対話の場の設置検討
を論じている。上記の規範はこの2項目目の成果であろう。その他にも、
・2017/12、Wannacry攻撃について北朝鮮を非難
・2018/12、中国を拠点とするAPT10に対しての非難
など具体的な行動も起こしている。この場はどんな雰囲気かと聞くと、「規範等は議論しますが(中露対欧米の)陣営囲い込みの場」との回答だった。
日本政府もこんな会合で、プレゼンスを示してくれると嬉しいですね。