Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

危険物としての酸素

 「COVID-19」感染拡大で自宅療養の人が増え、自宅で容態が急変して亡くなる人も出始めた。軽症で自宅療養となると、

 

・1回/日の保健所等からの電話

・パルスオキシメーターで自己診断

・酸素濃縮器等で対症療法

 

 くらいが精一杯らしい。容態が悪くなって救急車を呼んでも入院出来るアテはなく、長時間救急車を占拠したままになる事態も発生している。軽症者には「抗体カクテル療法」がいいというのだが、点滴として体内に入れるため静脈注射ができないといけない。ワクチンの筋肉注射より難しそうだから、素人には無理だろう。結局入院が必要で、そのベッドがないという困った事態。

 

 自宅等で治療が無理ならせめて対症療法ということで、酸素濃縮器などに注目が集まっている。そういえば春にデルタ株で悲惨な状態になったインドで、酸素ボンベを奪い合うシーンがあった。

 

 政府などは「酸素ステーション」を設置して、軽症患者を一時期待機させることにしているらしい。所詮時間つなぎだが、ないよりはましである。加えてある程度安全管理できる環境下で酸素を使えるなら、意味はある。それというのも「酸素」は実は危険物だからだ。

 

わずかな火でも…自宅療養者 酸素吸入装置使用時の火災に注意 | 新型コロナウイルス | NHKニュース

 

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 自宅で不用意に酸素(濃縮器)を扱い火災を起こしたケースがあり、約20年間に85人が亡くなっているという。通常の酸素濃縮器の濃縮率は35%ほどで、それでもわずかな火が引火するのだ。

 

 思い出したのは、帝国海軍の秘密兵器「酸素魚雷」。魚雷は戦艦もさほど装甲を張り巡らさない水面下にダメージを与えられる兵器だが、速度が30ノットほどと遅く、射程が数千メートルと短いのが難点だった。燃料を燃やすため酸素が必要だが、空気中の酸素濃度は21%ほど。78%は余分な窒素である。

 

 純酸素を使えば射程も速度ものびるのだが、純酸素はとても危険。そこで海軍技術陣は、最初は空気を投入徐々に酸素濃度の高いものに替えていく技術を開発した。速度50ノットで射程は1万メートルまで延びたという。太平洋戦争では確かに戦果も挙げた酸素魚雷だったが、危険な設備と積むことになりそこへの被弾で沈没した潜水艦や駆逐艦もあったように思う。

 

 35%濃縮とはいえ酸素はやっぱり危険物、濃縮器を扱う人はそれを知った上で使ってほしいと思います。