Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

中国市場イノベーションの陰り

 習大人の「国進民退」施策が、かなりおおっぴらに進んできた。先日「滴滴」の海外上場をとがめてサイバーセキュリティ審査をかけたこと、他の海外上場希望企業にも事前審査をすると告げたことを紹介した。僕の専門であるデジタル分野だけでなく、教育業界へのしめつけも厳しい。多くのプライベート教育企業が、その存続を危ぶまれている。

 

 アリババを始めとする中国版巨大IT産業には、格差拡大に悩む市民の怒りが向けられている。また極端な「教育至上主義社会」である中国で、「一人っ子」に教育を受けさせることによる両親の負担の大きさ、裏を返せばそこに付け込んで肥え太る教育産業も怨嗟の対象だ。こういうところ(ハエかトラかは別にして)を叩く分には、市民も反発はないだろうとの共産党政権の読みだと思われる。

 

 しかしこれらの施策の影響は、中国経済に少なからぬ影響を与え始めていると思う。直接的には株価の下落だ。米国に上場している中国企業への不信が高まり、株が売られている。時価総額で80兆円以上が失われたと下記の記事にある。

 

米上場の中国株、時価総額7690億ドルが消失-中国が締め付け強化 - Bloomberg

 

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 さらに中国本国・香港市場での株価下落も始まっている。先週は日経新聞が「中国独禁法、革新損なうリスク」と題する記事を載せた。特に巨大IT企業に対して、独占禁止法を「積極適用」してその足を止めようとする動きが見られ、それは中国市場の革新を妨げる公算が高いという内容だった。

 

 そんな状態で株価上昇や配当を期待して、これらの企業の株を買おうという人は少ない。普通に考えれば売り抜けようとするだろう。さて、問題はここからである。これら中国企業の株式市場から消えたカネはどこに行くのか?別の株式市場?仮想通貨?不動産?

 

 そして市場システムへの影響は?例えば株式市場で損失を被った企業(IT企業とは限らない)が補填のため別の株式を売りだしたり、最悪損失を被って倒産したりしないのだろうか?この流れと関係ないのかもしれないが、半導体大手の「紫光集団」が破産したとのニュースがあったばかり。

 

 中国の地方政府や郷鎮企業などには、返済困難な債務も多いと言います。そういうものに飛び火して、大きなリセッションにつながらないか心配です。「ツノを矯めて牛を殺す」羽目にならないように、習大人には自制をお願いしたいですよ。