Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

IT企業の海外上場に「待った」

 今月、中国版Uberとも言われる配車サービス大手「滴滴出行(DiDi)」が、中国当局から、

 

・新規アプリダウンロード禁止

・アプリストアからも削除

 

 の措置を受けた。当局はこれを、サイバーセキュリティ法等に基づいて審査を行う間のことだと説明している。理由は「国家安全を守り、公共利益の保障するため」らしい。習大人がアリババの子会社「アント」の上場に待ったをかけるなど、大手IT企業に冷たくあたるようになっているが、これもその一環。ただどうして今?というと、先月末に「DiDi」がニューヨークに上場したことに関係がある。

 

 それが分かったのは、先日中国当局が「100万人以上の個人情報登録を持つ企業が海外上場しようとする場合は、事前に審査する」と発表したから。

 

海外上場予定の中国企業、ネット登録100万人超は審査へ: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 審査って何と言うと、ネットワーク安全審査弁公室によるサイバーセキュリティ審査だと、この記事にある。どうやらこの事前審査の方針を出す直前に「DiDi」が上場してしまったので、後付けで「待った」をかけたわけだ。

 

 上場というのは、理解していない人もいるのだが「誰にでも売ります」ということ。共産主義国にいながら、習大人はこれを理解しているようだ。

 

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 たとえば「DiDi」に溜まった中国人の個人情報は、中国人以外の大株主が出てくるとその支配下に置かれるかもしれない。これを当局は怖れ「審査」をすることにしたわけだ。僕らは産業界の人間だから「DATA Driven Economy」と言い続けても、

 

・DATA Driven Policy

・DATA Driven National Security

 

 までは言わない。しかし実態は、その領域まで来ている。デジタル以前から「情報を制するもの、世界を制す」というではないか。

 

 先日中国に詳しい人から話を聞いたが、習大人自身が演説の中で「データが重要だ、データを守る」と何度も言っているという。日本ではデジタルや政策の専門家だけは「データが大事」というのだが、一般の人達にはさほど浸透していない。確かにTVニュースで菅総理が記者会見するのは、「COVID-19」対策やオリンピックのことばかり。データのことなど全く出てこない。

 

 実際には「データ戦略」など策定しているわけで、政府広報はもっとその点をアピールしていただきたいと思います。