Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

半導体産業、栄光と挫折(前編)

 国際的なサプライチェーンの発達は、間違いなく企業の構造改革を図り、経済成長をもたらした。その半面企業も製品も個人も例外なく国際競争にさらされ、1人の勝者が他の9人を蹴落とすような経済ジャングルを作ってしまった。米中対立などでサプライチェーン全体の見直しが進む中、海外から買った方が安いと言われていたものも、再び国内で生産することの検討が始まっている。

 

 先ごろ経産省は、日本の半導体やデジタル産業の戦略を見直すとして、検討会を開いた。初回のテーマは半導体

 

経産省、半導体戦略策定で初会合 国内製造基盤を強化 | ロイター (reuters.com)

 

 この記事にあるように、往時は世界シェアの50%を持っていた日本だが、現在は10%にまでシェアを落とし生産設備等も老朽化している。ロイターは割合フェアなトーンで事実を述べているのだが、中には日本の経営者が無能だと罵るメディアもあるやに聞く。

 

 経営者が無能だったとは、僕は思わない。では日本の半導体産業はどうしてシェアを落としたのか?その答えは簡単、半導体事業が儲からなくなったからだ。僕がまだ30歳そこそこだったころ、コンピュータ事業部門に所属していたが半導体事業部門に大学の先輩が多く、よく交流していた。その時の幹部の「半導体は良くなると凄いが、悪くなるのも凄い」という言葉が、耳に残っている。

 

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 技術開発にも設備投資にも、多額のお金がかかる。ただ一発当たれば、そんな投資は直ぐに取り返せる。これは日本企業だからというわけではなく、世界中の大手半導体企業は何度も危機を迎え、あるものは消えていった。企業グループの中の半導体事業の場合は、他の事業の利益でカバーできるのだが、社内での地位は安定しない。TOP経営者はこのボラティリティの高い事業を嫌う傾向があって、機会があれば他社に譲渡できないか考えるようになる。

 

 僕自身も40歳代で幹部スタッフをしていたころ、半導体事業部門が不況になったときの経営改善資料計画を見た。そのときの上司は経験深い人で「4年前の資料を見てみろ」と渡されたのが、前回の半導体事業部門の経営改善計画。正直酷似していて、違うのは日付だけといってもいいくらいだ。

 

 その幹部はTOPに、半導体事業部門の売却を提案したと思う。そのせいかどうかは別にして、今この会社には半導体事業部門はない。

 

<続く>