Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

サイバー空間での米中対立

 バイデン・菅会談は、元駐米大使など有識者の意見では「大成功」だったとの評価である。台湾有事を見すえて日米同盟の強化を図るという意図は、明確に示された。まあ駐米大使というものはどんな状況でも「現在の日米関係はかつてないほど順調」と言うのが仕事だと、元駐米大使に聞いたこともあるので割り引く必要はあるが。

 

 他の有識者(国際政治が専門の学者さんたち)は、日本の最大の貿易相手国は米国ではなく中国であることを指摘し、日本の立ち位置は難しいともいう。それを言うなら米国だって中国との貿易量は半端ではなく、米中デカップリングなんてできっこないという学者さんもいた。

 

 両国は日米同盟強化でFOIPを推進、他の同盟国も巻き込んで中国包囲網を強化し「次世代技術での優位を専制主義国家には渡さない」との意気込みを示した。その一方米国はケリー特使を上海に派遣、気候変動問題については中国と協調路線をとることで合意している。新しい「冷戦」は全面対立ではなく、ある分野では協力するという柔軟なものになるようだ。

 

        f:id:nicky-akira:20210419061754j:plain

 

 それではサイバー空間での立ち位置はどうかと言うと、こちらはやはり「臨戦態勢」と見るべきだ。日米首脳会談、ケリー特使の訪中と同時期の17日にFBIのレイ長官が、上院の公聴会でサイバー空間経由の中国の「活動」が激化していると公表している。

 

CNN.co.jp : 中国絡み捜査は2千件以上、「10時間」ごとに追加 FBI

 

 中国政府の関与が疑われる案件をFBIは2,000件以上抱えており、10時間に一度の割合で新規案件が起きるというのがレイ長官の主張。中国系で米国で暮らしている人たちへの「深くしつこい」追跡もあるし、米国政府の組織等に係るものも多いという。そういえば先日、「大紀元」の印刷所が物理的に襲撃されるという事件もあった。中国の外から現体制に挑む中国系のメディアや団体に対して、特に神経をとがらせているのかもしれない。

 

 ただ中国に言わせれば「米国だってやっているだろう」との反論もあるだろう。スノーデンがバラしてしまったデジタル技術を使った諜報手段「プリズム」が、その先駆けといえるだろうし。

 

 サイバー空間の法整備が不十分なのは確かで、どこまでが合法/違法という線もあいまい、裁判となっての判例も少ない。日米同盟強化はいいのですが、サイバー空間での日米協力はどこまで可能なのでしょうかね?