Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

公益に資する個人情報の活用

 個人情報保護法が仮になかったとしても、個人情報を本人の同意なく私利私欲のために利用してはいけないのは、法治国家の日本では明白なことだ。極論を言えば、憲法上の個人の権利の侵害にあたるのではなかろうか?ただ個人情報は同意がなければ全く使えないのかと言うと、そうではない。いくつかのケースがあって、例えば「公益」に資することなら許されるのだ。今回個人情報の活用に関する識者と、意見交換する機会があった。

 

 まず「公益」とは、不特定多数の利益に寄与するものだという。対象となる法律としては、

 

・統計法

個人情報保護法

マイナンバー法

災害対策基本法

 

 などに「公益活用を可能とする例外規定」がある。これを実践したものに、今回の「COVID-19」対策のためのシステム「新型コロナ感染者等管理システム:HER-SYS」がある。公益を追求することは日本だけのことではなく、個人情報保護意識の高い欧州でさえ、データ活用のためのガイドラインを出していることは先週も紹介した。

 

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 日本の個人情報保護法は今年見直し期を迎えていて、昨今の「COVID-19」対策を迫られたこともあって「公衆衛生分野」でデータ活用の枠を広げたいと思う人は多いようだ。このデータ使えば多くの人を(感染から)救える、不安を解消できるなどのメリットがあるのに、

 

・同意をとりつけようにも当人の所在が分からない。

・ご本人の意識がないなど回答を期待できない。

・利を説いても、同意してもらえそうもない。

 

 ような場合には同意抜きで利用できるようにしたいということだ。個人情報保護委員会が識者に意見を聞くと、

 

・治験データなど使いたい(目的外利用・第三者提供)が、患者の連絡先が不明。この場合、公衆衛生例外と言えるか?

・治験データを仮名加工情報として使えば、上記同意は不要か?

・AIに治験データを与えた結果のパラメータは、個人情報ではないと言っていいか?

 

 などという疑問を投げかけられたという。法理論的にはおそらく全部OKだと思うのだが、法的にOKならいいとは限らない。「あいつ、俺のデータを勝手に使って儲けている!」と糾弾され炎上したら、その活用は事実上封印される。

 

 「公益」と掲げればまず反対する人はいないのでしょうが、突き詰めていくと投資する人、汗をかく人、リターンを得る人が個々に存在します。どう「炎上」を防ぐかが、残された大課題ですね。