Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

中国企業とのデジタル連携リスク

 バイデン政権閣僚の初の外遊となった「日米2プラス2」は、中国海警法への深刻な懸念を表明して終了した。米中首脳会談も控えていながら、中国を「名指し」したことが特徴的だ。安全保障がらみのことでは日米同盟対中国の図式が明確なのだが、こと経済となるとそうはいかない。GDP1~3位の国は、これまでのグローバル化の流れに乗って、非常に複雑な経済連携をしている。

 

 今週、日本のICT業界に絞っても2つの大きな「事件」があった。まず楽天の資本増強の件、日本郵政からの1,500億円がニュースになっているがテンセントからも660億円ほどが出資されていることを忘れてはいけない。菅政権の目玉政策「携帯電話料金下げ」のせいもあり、通信設備投資が重くのしかかった楽天の経営が苦しく「背に腹は代えられない」増資だったと思う。ただ中国企業であるテンセントの持ち株比率も、3.7%ほどになっている。

 

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 国会では「東北新社」が外資規制に違反していたことへの追及も続き、総務省は「BS4Kシネマ」の免許を取り消すと言っている。しかし単なる映画のTV放送と、各種のサービスに係る楽天の業務では安全保障を含めたリスクのレベルが違う。前者は一方的なサービスだが、後者は電子商取引や通信(の秘密)まで含んでいるのだから。

 

 その懸念を強く印象付けたのがもうひとつの「事件」、「LINE」が監視業務を中国企業に委託していて、個人情報などが中国企業従業員にアクセス可能になっていたというもの。

 

中国の4人に接続権限 LINE「日本に人材おらず」:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

 この記事では監視システムの開発運用に、中国企業が関与(というより主役)していたといいうもの。必然的に各種のデータは中国に渡ることになる。記事はアクセス権云々と言っているが、中国企業にデータを預けた時点で「国家情報法」の対象となって中国共産党はそれを覗き見ることが可能になっている。

 

 「ヤフー」が中心の「Zホールディングス」としてみれば、新参の「LINE」の不具合への対処を迫られることになったわけだ。傘下に入れる前に、この種のリスクに対してデューデリジェンスはしていたろうに・・・。

 

 単なるモノの輸出入ではなく中国企業とのデジタル連携に関しては、大きなリスクを伴う事を経営者は充分認識する必要があるでしょうね。