ある意味米中対立の最初の発火点となったのが、次世代通信規格(5G)を巡る覇権争いだ。世界のあちこちにHuaweiやZTEの製品が浸透してきて、通信内容をこれらの企業に「盗聴」されるリスクを米国政府・米軍は抱いた。中国には「国家情報法」という法律があり、中国企業が得た情報は国家に渡すことになる。
これはかつて米国自身が「エシュロン」や「プリズム」といった仕掛けで、世界に対してやっていたことの裏返しである。そこでこれらの企業の製品を使うなと自国だけでなく同盟国に求め、対抗措置として西側企業群の協力で安心できる5Gネットワーク構築に乗り出した。
ひとつのやり方を、O-RAN(Open Radio Access Network)といい公開規格・仕様で5Gネットワークを形成しようというもの。これに対し、V-RAN(Virtual Radio Access Network)という仮想化技術を使う方式を提唱している企業群もいる。僕自身はこれらの動きに注目してきたのだが、最近日本企業の間で顕著な動きがあった。
O-RAN等の活動には当然日本企業も参画しているのだが、日本のキャリアや通信機器メーカーは共同プロジェクトに向けて協議をしていた。この度その中核ともいうべき、NTT-NEC連合の発表があった。
https://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2020/08/nttnecg.php
ただ上記のような批判的な記事もある。すでに中国企業らに特許面・技術面で大きく差を付けられているからムダだというのだ。曰く「両者の研究開発力を合わせても、Huaweiの15%でしかない」とのこと。おおむね事実だとぼくも思うのだが、なぜそうなったかをこの記事は明らかにしていない。ともすればHuaweiの経営者が優れていて、日本の経営者は無能だったと言いかねない論調である。
これには、僕は一つの仮説を持って反論したい。それは日本企業の多くが株式会社であり、いつ回収できるか不透明な技術に過度に入れ込むことは経営者として許されていないことである。5Gは技術的には大容量通信、低遅延、同時接続数増といいことづくめだが、それで利益を得られるから投資しようというアプリケーション事業者がいつ、どのくらい出てくるかは(今でも)不透明なのだ。
<続く>