Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

外交手段としてのサイバー攻撃

 日本での報道は多くないが、米中対立に隠れて豪中対立もより深まっている。オーストラリアは、数年前から中国の南シナ海への進出に警鐘を鳴らしてきた。英国連邦の太平洋国家として毅然とした態度を示しているのだが、当然中国が面白がるはずはない。さまざまな嫌がらせをしてきたという。

 

 今年になって、「COVID-19」関連でオーストラリア政府が中国政府にウイルスの発生源を明らかにするよう求めたこともあって、両国間の溝は深くなった。中国政府は、自国民にオーストラリアへの旅行をしないよう呼び掛けたり、同国からの大麦に関税をかけ、牛肉の輸入を停止している。またオーストラリア国籍を持つ人物に死刑判決を下しもした。

 

 この問題の根は深く、中国はオーストラリアを第二の香港にしようとしているきらいがある。2000年代になって華僑ネットワークなどで同国の政財界に接近、中国企業が港の管理権を買ったり、電力公社の買収を図ったりしている。

 

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 こんな状況下で、今回モリソン首相が発表したのは、政府・公共サービス機関・民間企業などに国家レベルのサイバー攻撃が繰り返されているということだった。名指しこそしていないものの、事実上中国政府の関与を念頭においているものと思われる。

 

https://www.bbc.com/japanese/53103131

 

 オーストラリアは南半球で数少ない先進国のひとつで広大(世界6位)な国土を持つが、人口は2,500万人あまりと多くない。太平洋を南から扼する位置にあり、中国の世界制覇のためには重要な国だ。すでにその北のパプアニューギニアソロモン諸島などの国は、ある意味支配力を得ているので、旧帝国軍のように「米豪遮断作戦」にでてきたわけだ。

 

 今世紀に入ってゆっくり進めてきた政財界への浸透に加え、とうとうキバを剥いて圧力をかけてきたのだろう。これには2つ見方があって、

 

・「COVID-19」を早期に終息させ他国に混乱に乗じての攻勢か

・経済や香港問題で内政がもたず、政権の延命のための突破口探しか

 

 意見が分かれているが、最悪の事態を考えると前者とみておいた方がよかろう。それにしてもサイバー攻撃が外交手段(圧力)として使われるとは困ったものです。日本の政府・公共サービス機関・民間企業も、「国家レベルの攻撃」に備える必要がありますね。