小林源文という劇画作家(イラストレータという人もいる)は、戦争物の劇画で独自のジャンルを築いた人である。特に、滅びゆくドイツ軍の描写にはリアリティがある。代表作のひとつ「黒騎士中隊」は、これをシミュレーションゲーム化したものさえあり、ゲームショップに彼の作品が並ぶなど、熱烈なファンが多くいた。
敗色濃い東部戦線、この過酷さは僕らには想像もできないものだろう。戦車ものではないがサム・ペキンパー監督の"Cross of Iron" にその片鱗を見ることができる。そういえば、同名のゲームもあった。ドイツ国防軍最後の戦いに投入された猛獣たちをご紹介しよう。右から順に、
◆重戦車ティーゲルⅠ
兵装:長砲身88mm砲、車体機関銃(火力3)、同軸機関銃(火力5)
装甲はまずまず(正面11、側面他8)
移動速度:12ヘクス/ターン
ロンメルが北アフリカを去る時、少数のティーゲル戦車がチュニジア戦線に投入された。米軍は非常に驚き、ドイツ機甲師団の恐ろしさをかみしめることになる。東部戦線のソ連軍も同じで、T-34/76では全く歯が立たなかった。主砲は例の88mm高射砲の転用、ドイツ軍将兵が「アハトアハト」と呼んで頼りにしていた砲である。重装甲ではあるが、避弾経始(ナナメ装甲)ではないので実効的な防御力はそれほど高くない。問題は機動性と重さだった。とはいえノルマンディー上陸後も、わずかのティーゲルに米軍は手を焼いた。空軍の助けがなければ、とても持ちこたえることはできなかったろう。
◆中戦車パンテル
兵装:超長砲身75mm砲、車体機関銃(火力1)、同軸機関銃(火力5)
装甲は厚い(正面18、側面他6)
移動速度:15ヘクス/ターン
生産性を除けば、第二次大戦中の最良中戦車である。超長砲身の75mm砲は十分な破壊力があるし、射程も長く場合によっては「アハトアハト」より威力があったかもしれない。初期には機械的な不良に悩まされたが、機動力、防御力、攻撃力のバランスは極めて良かった。問題は生産性の低さで、これは大戦後期のドイツ軍AFV全てに言えることだが、重く大きくなりすぎて輸送すらも苦労している。
◆重戦車ティーゲルⅡ
兵装:超長砲身88mm砲、車体機関銃(火力3)、
同軸機関銃(火力5)、対空機関銃(火力2)
装甲は極めて厚い(正面26.側面他8)
移動速度:11ヘクス/ターン
ドイツ軍の最終兵器である。ナナメ装甲も取り入れ、最強の戦車になった。これも問題は機動性や輸送の問題。登場の時期には防御戦しかない状況だったので、あまり表面化しなかったかもしれないが。
プラモデルでよく見かけるAFVだし確かに格好はいいのだが、どこかもの悲しさを感じるようになってきた。映画「プライベート・ライアン」で、本物そっくりのティーゲルⅠが出てきたときは感動した。それまで「バルジ大作戦」などでは、パットン戦車などに鉄十字を書いてティーゲルを「演じ」させていたのだが、もうひとつピンとこなかったものである。これからの映画には、CGで本物そっくりのAFVが登場することを期待したい。