Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

HDD盗難事件の判決(前編)

 神奈川県からHDDの内容を消去して廃棄する業務を請け負っていた会社「ブロードリンク」の従業員が、データを消す前のHDDを盗み出して転売していた事件の判決が出た。被告人が盗んだのは中古(というより廃品)のHDD51個。物理的な時価総額10万円以下だという。ただ行政機関で使用されていたものだから、関連情報は残っていた。それがネットオークションに出されて転売されたことによる被害というのは、HDD単体の価値と比べてとても比較できるものではない。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60132110Z00C20A6CE0000/

 

 この記事によると、被告人は1,900万円を「ブロードリンク」に弁済しているらしい。当然「ブロードリンク」は神奈川県や情報漏洩で被害を受けた個人や企業に、例えば「慰謝料」として相応の金額を払っているはずだ。被告人としては「まだ使えるHDDなのにもったいない」と思ったというのだが、とても高いものについた。まあ「弁済」したことによって社会の混乱は収めたということで、判決は懲役2年執行猶予5年と猶予付きの刑となったのだろう。

 

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 今回流出したのは個人情報だけかどうかはわからないが、個人情報についてはその「お値段」はずっと値上がりをしている。とりあえずこれで収めたとしても、引き続き別の情報が闇サイト等に出てくる可能性はある。それが被害を生んだときは、誰がどう補償するのだろうか?

 

 やはり気になるのが、今回の判決がHDDという有体物を盗んだ罪での裁定だということ。HDDの中身の方がずっと価値があったのに・・・である。以前から日本の刑法に「データ窃盗罪」がないのを、僕は欠陥だと思っている。データは「無体財物」ゆえ、刑法では(電力を盗む以外は)裁くことができない。

 

https://nicky-akira.hatenadiary.com/entry/2019/11/04/150000

 

 今回の判決は、1,900万円で「弁済」をしているので実刑にしなかったということだろうが、データ窃盗罪が仮にあればどういう判決になっていたのか、あるいはすべきだったのかの議論は必要だろう。

 

<続く>