Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

マッカーサーの意地

 第二次大戦初期の各国のAFV開発状況を見てきたが、アメリカ軍についても触れておこう。自ら石油を産し自動車王国であるアメリカは、他国よりもAFV開発については優位にあるはずだった。しかし国民は戦争を望んでおらず、ルーズベルト大統領も「不戦」を公約に大統領選挙を戦い、勝った。欧州で戦火が開かれても、支援はするが参戦はしないスタンスなので、兵器開発も国運をかけてやるという雰囲気にはならなかった。
 
 広大な土地を持ってはいるものの、基本的には海洋国家であるアメリカは、AFV開発においては立ち遅れる結果になった。アメリカ軍の初期のAFVを見ていこう。右から順に、

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◆M3A1スチュアート軽戦車
 兵装:主砲長砲身37mm砲、車体機関銃(火力2)、
   同軸機関銃(火力4)、対空機関銃(火力2)
 装甲はまずまず(正面4・側面他3)
 移動速度:18ヘクス/ターン
 
 速度の速い軽戦車である。対戦車用にも十分使える主砲だが、トーチカなどに対しては威力不足。コンセプトは戦線に突破口が開いた後、戦果を拡大するために敵後方に回り込むイギリス軍の巡航戦車に似たものがあったろう。アメリカ軍らしく、これらを「騎兵戦車」とも呼んでいた。西部劇の騎兵隊のような機動部隊である。
 
◆M8 自走榴弾砲
 兵装:主砲短砲身75mm榴弾砲徹甲弾は撃てない)、対空機関銃(火力4)
 装甲はまずまず(正面6・側面他3)だが、オープントップ
 移動速度:17ヘクス/ターン
 
 戦車ではない。そこそこの装甲防御はあるが、敵に近接しての砲撃(突撃砲的運用)は想定していない。歩兵の白兵戦に巻き込まれたら、手榴弾を浴びて一巻の終わりである。それでも十分な移動能力があるのは、砲兵陣地の転換が容易だということ。自走能力のない砲兵は、位置が露見したら大体運命が尽きる。自走能力があれば、何発か撃って、さっさと引き上げることもできる。
 
◆M3中戦車
 兵装:主砲75mm砲(車体装備)、副砲長砲身37mm砲、車体機関銃(火力2)、
     同軸機関銃(火力4)、対空機関銃(火力2)
 装甲は厚い(正面8・側面他4)
 移動速度:13ヘクス/ターン
 
 急造戦車である。欧州の戦訓によれば、スチュアートの37mm砲では威力不足なのは明らかで、75mmクラスの砲が求められた。しかし、回転砲塔に大口径砲を積む技術開発が間に合わないので、車体に装備するフランス軍のシャールB1戦車方式を採ったもの。エンジン開発も航空機エンジンを流用した結果、車高は高くなり良い的になってしまった。それでもイギリス軍にも供与され、大戦初期の主力戦車となった。
 
 総じて感じられるのは、アメリカ軍(人)の合理性。戦場に一定の量のAFVを投入するにはどうすべきかを優先し、車体装備の主砲や車高の高さには目をつむったことは、結果として正しかったと言えよう。それでもろくな対戦車兵器を持たない太平洋戦線の日本軍はともかく、北アフリカやイタリアでまみえることになったドイツ軍相手では、アメリカ軍も苦戦することになる。