Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

口コミだけは防げないから

 香港のデモが収まらない。容疑者の身柄を中国本土に引き渡すことを可能とする法律の施行にあたり、市民の人権が侵されるとして立ち上がったデモだが、空港ターミナルを占拠したり、ゼネストを予感させるまでに膨れ上がった。香港政府当局は当面この規定を適用しないことを表明しているが、民衆の怒りは収まっていない。

 

 デモ集団は行政府長官の辞任を求め長官自身も辞めたいようだが、バックについている中国政府(習大人)がそれを許さない。エスカレートするデモに、治安当局の表の取り締まりとは別に秘密警察や暴力団まで繰り出して中心人物や組織を締め上げているらしいが、これまでのところデモ終息の見通しは立っていない。

 

 ある人によると一般の香港市民は、2つの階層に分かれるという。ひとつはデモに積極的に参加する人たちで、もうひとつは参加したいけど踏み切れていない人たちだそうだ。中国政府はこの事態を憂慮していて、ウラで米国外交官が扇動しているなどと非難をする一方、香港の火が本土に広がらないよう必死になっているともいう。チベットや新疆ウィグル自治区などに飛び火したら現体制が危ない。

 

    f:id:nicky-akira:20190810172144j:plain

 

 そうなる前に「第二の天安門」として実力で鎮圧することも、上記のようになれば躊躇するまい。そんな中、面白い記事があった。香港のデモに参加したキャセイパシフィック航空の搭乗員は、本土便に乗せるなというのだ。

 

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/08/post-12744.php

 

 キャセイパシフィック航空の最大株主は「スワイヤーグループ」という民間企業連合。つまりれっきとした民営企業である。それに中国政府がどれだけ影響力を持てるかは不明だが、そこまで焦っているのかとも解釈できよう。

 

 香港デモの状況は、もちろん中国本土のメディアでは扱われない。インターネット・SNSで入ってくる情報に関しては、100万人の人民解放軍兵士がネット上を監視して削除している。それでも止められないのが個人の口コミ。実際に香港デモに参加したキャセイの搭乗員が、北京などで一夜を過ごしレストランでグチをこぼすようなことがあれば、じわりじわりと噂は広がる。

 

 今回の「指令」はそれを防ごうとしているようだが、キャセイの搭乗員を含む香港市民のほとんどが、デモに参加するかどうかは別にして中国政府に不信を持っている以上、「指令」が守られたとしても噂を防ぐことはできまい。香港デモは、習大人の悩みどころとしてトランプ先生の挙動より困ったものでしょうね。