「欧州最後の独裁者」と呼ばれる、ベラルーシ(白ロシア)のルカシェンコ大統領が窮地に立っている。先日の大統領選挙で6選を果たしたというのだが、多くの国民も国際社会もその結果を信じてはいない。対立候補だったチハノフスカヤ氏は隣国のエストニアに逃れているが、そこからSNSで大統領を糾弾するメッセージを出し続けていて、これに呼応した市民のデモが数十万人単位で起こっているのだ。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/08/post-94245.php
元々チハノフスカヤ氏の夫(ブロガーだったそうだ)が立候補するはずのところ、政府に妨害されたので政治には素人の妻が立候補、流れで野党統一候補になったのだという。ルカシェンコ大統領にとって誤算だったのは、SNSの力。それまで国営メディアばかりで市民に対しての情報統制を完璧にしてきた油断から、新しいメディアの力を軽視したものと思われる。
しかし10年弱前、「アラブの春」と呼ばれた市民運動が中東の多くの国の「独裁者」を倒した。これを恐れた中国共産党政権は、徹底したSNSを含むデジタル情報を管理し、個人を監視する社会システムを作り上げた。
ある記事ではルカシェンコ大統領は、デジタル産業振興を行いながらこのような統制を怠ったとある。彼にとってデジタルはお金を産む「乳牛」のようなものであって、まさかそれが自分に噛みついてくるとは考えていなかったとのこと。
中国のような徹底したデジタル統制・管理社会を作らなくても、近隣国エストニア(IT立国として有名)などからのデータ流通を制限し、自国内での情報発信に目を光らせていれば「独裁」は続いたかもしれない。
もちろん「独裁者」がこのまま逃げ出すことはなく、市民に向けて発砲するなどの惨事はあり得る。ロシアのプーチン政権からの介入もあるかもしれない。「白ロシアの春」が来るかどうかはわからないし、来たとしても素人寄せ集め政権が失政を繰り返してカオス状態になるかもしれない。
そうはいっても、旧ソ連圏で起きた民主化の動き、興味を持って見守り続けることにします。デジタル技術が民主化に大きな力を与えるものだという仮説を、証明してほしいですね。