Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

人種問題、移民問題

 「プリゴジンの乱」の余波とウクライナの反転攻勢の報道の陰で見過ごされがちだが、フランスの暴動は大きな騒ぎになっている。きっかけは、アラブ系の少年が車で逃走しようとした(諸説あり実態不明)ところ、警官に射殺されたという事件。米国のBLM運動と同じような話だが、フランス人の警官も銃を発砲するのだと驚いた。

 

 聞くとマクロン大統領が就任した2017年に法改正があり、警官の発砲要件が緩和された。それ以降自動車に対する発砲件数が増え(*1)、昨年は死亡者13名を出しているとのこと。死亡者の多くはアフリカ/アラブ系。そこで人種差別反対のデモと、暴動が起きてしまったという次第。

 

 もちろん背景には、急激な物価上昇などの社会不安がある。マクロン政権のタカ派的姿勢が問題なのか、それを必要とする治安の悪さや移民増加が問題なのかは分からない。これまでのところ4万人の警官が鎮圧に動員され、数千人規模の検挙者が出ているという。

 

        

 

 一方米国では、最高裁の判決がいくつか出て、これらが保守より(というか反動)の色合いが強いので、デモなどの反発が相次いでいる。トランプ政権が最高裁判事共和党系の人物で固めていたから、ある程度は予想された事態だが、バイデン政権には大きな痛手となっている。昨年も最高裁は中絶禁止を州法で規定することを容認する判断を下し、州政府や市民の分断を招いていた。今回は、

 

・大学入学選考で黒人等を優遇する措置(*2)を違憲とした

同性婚カップルからの依頼を宗教上の理由で拒否したデザイナーを支持した

 

 のほか、政権の学生ローン返済免除措置も違法としている。最高裁の判事たちは、すでに人口的にはマジョリティではなくなったWASPを支持し、マイノリティや弱者を救済しようとする政策には反対していく姿勢が明白になっている。

 

 日本は、文化はたどり着くが大軍の侵略や民族移動を阻む程度に広い海峡に護られてきた国です。移民問題には多くの人がナイーブ、さて今後これらの「先進国」を見て、どうかじ取りをするのでしょうかね。

 

*1:2016年、137件⇒2017年、202件

*2:アファーマティブ・アクション