Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

電気通信役務利用者情報って何?

 年末に奇妙な話が飛び込んできた。総務省電気通信事業法を改正し、事業者に対して利用者情報を適切に管理するように規制強化をするというもの。背景には昨年「LINE」が利用者には情報を国内で管理すると言っていたのに、実は(よりコストが安い)外国のサーバーで保管していたという問題がある。

 

 僕に言わせればこの件は、単純な利用者との契約違反で決着させればいいのだが、総務省はこれを契機に(利用者保護を盾にとって)事業者規制を強化して、省としての権益を増やそうとしたのかもしれない。ずっと秘密会で議論が進み、年末に突然こんな検討をしています、来年の通常国会に事業法改正案を出したいと言われたので、産業界はびっくりした。

 

 事件があったので規制強化するということだけに限れば、ごく普通な話。これに産業界(新経連が口火を切り、経団連・同友会・在日米国商工会ら)が一斉に異論を唱えると、総務省がまっとうなことをしようとしているのを利権の産業界が阻もうとしているかのように報道されたケースもあった。さすがに日経新聞は、フェアな記事を載せている。

 

LINE問題の規制強化、年内結論見送り 総務省、反発受け: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

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 ただ紙幅の関係もあって、霞ヶ関で起きていることの全貌は書き尽くせていない。この記事でも「個人情報」の保管場所の議論があると言っているが、実は総務省は「個人情報・プライバシー」という言葉は本件では使っていない。なぜかというと「個人情報」となれば、個人情報保護委員会が管轄する「個人情報保護法」の範疇になるからだ。総務省はどうしても自分の管轄内に本件を収めるため、「電気通信役務利用者情報」という言葉を編み出した。これなら、電気通信事業法改正で収められるというわけ。

 

 この案が通る(改正案成立)とすると、1000万人以上の利用者情報を持っているサービス事業者や総務省が指定する業者(!)は、個人情報取扱責任者に加え役務利用者情報取扱責任者を置き、前者は個人情報保護委員会を、後者は総務省を見て仕事をすることになる。

 

 LINE問題を受けて個人情報保護の強化を図るなら、個人情報保護法の改正ですべきだと思う。それが「縄張り争い」に堕してしまってこのありさまなら、僕も絶対反対の立場。さて新年早々、本件がどう推移するか興味深いですよ。