とても今となっては「途上国」と言えない国も散見される。GDP世界二位の国はもちろん、G20構成国や技術力で優位に立つ国も見かけられよう。そのうち何カ国かは「途上国待遇返上」と言うのだが、中国などは話に乗ってこない。中国にしてみれば自国は広い、まだ途上のエリアもあるということらしい。これはインドも同じだ。
3)ルールメイキング
ここでの争点は3つあって、一つは電子商取引。デジタル分野の発展が早すぎ、国際的なルールの議論が後手後手に回っている。残る2つは、漁業補助金と産業補助金規律問題。世界経済発展に役立つ補助金を残し、阻害する補助金を禁止したいのだがこの線引きが難しい。
例えば国際市場で優位性を持つ産業に対する過度な補助金は、世界経済に健全性を損なうというわけ。デジタル分野で言えば、5Gで圧倒的な優位性を持つファーウェイなどに中国政府が助成金を与えるのは、このケースだと米国が言う。(僕もそう思う)
「電子商取引」という用語にしても、1995年に作った当時の「ネットで注文、やがて品物が届く」形態を表す言葉をそのまま使っている。当時は国境を越えたコンテンツ流通や、データそのものの販売などは考えられなかった。あらゆる産業でデータ流通は必要になり、今となってはどれが「電子商取引」なのか/そうでないのか区分がむずかしい。
新サービスに自信のある企業は、「これは電子商取引ではありません」といって、規制にとらわれず勝手に事業を伸ばすだろう。一方スタートアップやあとから参入した企業は、「電子商取引の枠を広げて、僕らの権利も守って」と訴えるはずだ。そうなれば市場は「弱肉強食」の世界になってしまう。国際的なデジタル市場を無法化しないため、経産省は以下のルール整備の必要性を言う。
・国境を越えるデータの確保、サーバーの国内設置要求の禁止
・個人情報保護、サイバーセキュリティ協力
・電子署名利用拡大、貿易手続きのペーパレス化
・デジタルコンテンツの電子的送信への関税不賦課
きちんと整理してもらったわけだが、聞き終わっての僕なりの結論はもうWTOという枠組みが限界にきているなというもの。特にデジタル分野はゼロリセットで、新しい枠組みを考えるべき時でしょうね。