Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

WTO改革の中の韓国

 今年のG20では「WTO改革」の話も主要テーマだった。最終的には17カ国しか賛同しなかったので「非公式会合」になってしまったが、信頼性のあるデータの自由な流通やWTOにおける電子商取引ルールの整備を加速化することを「大阪トラック」としてスタートさせるとの宣言が成された。狭い会場で、トランプ先生と習大人の間で安倍総理が発表した映像は、「G20そのもの」と誤解されたくらい有名になった。

 WTOというのは比較的新しい国際機関で、設立は1995年。それ以前はGATTという枠組みの中で協定に参加する国だけのものだったが、WTOとなって多くの国が参加することになった。その目的は、

 ・自由(関税の低減、数量制限の原則禁止)
 ・無差別(最恵国待遇、内国民待遇)
 ・多角的通商体制

 の基に世界の貿易を活性化することにある。単に物品の取引だけでなく、金融、情報通信、知的財産権やサービス貿易も含めた包括的な国際通商ルールを協議する場である。情報通信とはいえ、例えば通信プロトコルの標準化などは議論にのぼっても「デジタル貿易」そのものについては扱ってこなかったらしい。
 

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 そこで今回、電子商取引ルールを整備しようということになったもの。ただ「電子商取引:e-commerce」という言葉は狭く捉える人もいて、かつて僕がBtoBモデルの中でのデータ流通を言うと「それはe-commerceではない、e-businessだ」と言われたこともある。WTO改革の中では、そんな矮小化したことはやめて欲しいし、取引に付随するデータのやりとりだけでなく、データそのものの売買のルールも扱って欲しいと思っている。

 ただWTOにはほかにも改善すべき余地はあるようで、今般トランプ先生が言い出した「中韓は途上国扱いなのはおかしい」というのもそれ。中国はGDP第二位の超大国なのに、1995年設立時点のままなのだろう優遇措置がある。これは(トランプ先生にしては珍しく)正論だと思う。加えて驚いたのは、韓国も名指していること。確かにGDP11位の国なのだからそうだよなとは思いながら、まるで韓国が同盟国ではないような発言である。
 
 僕としては韓国は「Free Flows of DATA」のこちら側の国だと思っていたのだが、昨今のいろんな動きから見てそれを否定するような何かが起きているような気もする。そうだとすると、フッ化水素などの輸出管理強化や「ホワイト国」除外も、その流れに沿ったものかもしれない。朝鮮半島情勢は、急にHOTになってきましたね。