Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

出ました「ハンコウ」勢力

 河野大臣らの「脱ハンコ」の呼びかけは政権内で大きなうねりとなっており、行政手続き上での押印全廃はオンラインに乗った印象である。実際には細かな施行令・施行規則・地方の条例に加え、もう誰も検索できないような「通達」にまで、行政手続きは縛られているので、そう簡単ではない。ただ、いままで「できない」と諦めていた改革派の人たちが、やる気になったのはいいことだ。

 

 物理学で言う「作用には反作用がある」という定理は、政治学の世界でも成り立つ。「脱ハンコ」という作用には、必ず反作用があると思っていたら、それが早々に現れた。

 

https://mainichi.jp/articles/20201008/k00/00m/010/250000c

 

 名高い「ハンコ議連」が、「脱ハンコ」の動きは行き過ぎだと政府に苦言を呈し、反対署名を集めようとしている。後ろ盾となっているのは、時の権力者である二階幹事長。「署名を集めてしっかりハンコウしろ」と仰っている。まさに「出ましたハンコウ勢力」である。

 

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 「ハンコ議連」は、以前「印鑑登録のオンライン申請を可能にする」との提言をしているが、いかにも取ってつけたような話。ハンコをなくそうとしているのに、ハンコに係るある手続きだけをデジタル化して胡麻化そうとしている。そんなことになったら、典型的な「えせデジタル社会」だ。

 

 「ハンコ議連」の要望にはハンコ産業のメッカ山梨県の知事も参加していたと、この記事にある。議連の名前は「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」なのだが、文化と言うより産業保護の色合いが濃い。

 

 加藤官房長官は「実印の廃止までは考えていない」と応じたようだが、真のデジタル社会を目指すなら、サイバー空間で「私が私であることの証明」する手段を確立して、リアル空間での認証を不要にしてしまえばいい。具体的にはマイナンバーカードに内包される「電子署名の証明書」に何らかの生体認証を加えれば、かなりセキュリティ性の高い認証システムが出来上がる。

 

 マイナンバーカードについては種々の誤解があり、券面にナンバーが見える・見えないの論争が続いているが、サイバー空間では上記「証明書」の方がずっと重要だ。政府もこのあたりの説明をうまくして、市民の誤解を解くようにしていただきたいものです。