Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

情報通信法学研究会

 総務省の知人から「情報法」の議論をしている研究会のことを教えてもらった。何度かご紹介しているように、サイバー空間での法整備は全く不十分だ。もちろん国境がない空間ゆえ、これは日本の法学界だけの問題ではない。「有体物法」の概念で考えるから、貴重なデータを盗まれても「データ窃盗罪」は成立しない。「DATA Driven Economy」時代が来ているというのに、一番重要なものが法で護られていないというのは、どう考えてもおかしい。

 

 だから興味があったので、その内容を教えてくれと頼んだ。すると総務省が運営しているいくつもの研究会の中に「情報通信法学研究会」というものがあることが分かった。憲法・パーソナルデータ法・メディア法・行政法・経済法・情報通信法・民事法・商法が専門の法学者が中心で、法哲学コンピュータサイエンスの人も含め総勢50名ほどの会議だ。

 

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 ちょうど座長(東大の濱田名誉教授)が「情報法の来し方行く末」と題した講演をされるというので、聴講させてもらった。講演のポイントは、

 

◆以下の3本の支柱から成る「情報法」成立に向けた議論を続けている。
・情報それ自体やそれらの流通に係る価値の(社会的・個人的)重要性に着目した法制 
・情報の生産・流通・消費を大規模に支える組織ないしシステムに係る法現象 
・情報化、ICT(+AI)のもたらすインパクトをとりわけ考慮した法の取扱いとそのためのシステム
 
◆自由かつ多様な情報流通の確保、情報の保護、ユニバーサル・サービスの実現の3点を基本理念とする。
 
 というもの。法理論が主体で具体的にどうなるかについては、かなり遠い印象。その後の質疑・コメントで以下のようなものがあった。
 
・情報のランク付けをマスメディアが担えなくなった現在、情報を秩序化する機関が必要ではないか。
・情報の範囲は人間が知って理解するものだけでなく、AI等に与えるナマデータも含まれる。
・情報に対する権利について、個人の権利と捉えるかもう少し広く客観的な権利(法人やマシンを含むの意?)と捉えるか?
 
 40年間議論されているとのことだが、技術発展が非常に速いこともあって、まだ入り口の議論で、データの価値まで届いていない印象だった。人権や哲学が絡んできて難しいのは分かりますが、もう少し素人にも分かるように具体論をお願いしたいですね。