Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

中東の「Phoney War」

 安倍総理が、中東歴訪に出掛けている。米国・イラン対立などで緊張の高まっている中、イランと友好関係にある国の元首としてこの地域の安定に向けた外交を展開中とのこと。それ自体は評価できるのだが、この地域が本当に安定できるかは予断を許さない。石油利権のような話ではなく、イスラム教のスンニ派シーア派の確執などもっと根深いものがある地域だ。

 

 昨年は僕にとっての「中東デビュー」の年だった。かの地域に駐在している日本人の年次会合に参加したし、ブルカをかぶったお姉さんたちの訪問も受けた。

 

https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2019/08/13/140000

 

https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2019/11/29/060000

 

 少しはかの地域のことが分かってきたかもしれないのだが、その分警戒心も増している。僕のこの地域について知識は、「湾岸戦争」くらいしかない。悪役とされたサダム・フセインの治世が、地域の中では先進的で開放的だったことも知った。あるジャーナリストが、「フセインの軍隊には女性兵士もいる」と開放度を強調していた。

 

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 ブッシュ政権の米軍がイラク軍を崩壊させてから約30年、今度は米軍とイラン軍がにらみ合っている。無人機による司令官暗殺に対してイランは激高、イラクの米軍基地をミサイル攻撃した。そのさなかに、ウクライナの民間機をイラン軍が誤射して撃墜するという悲劇もあった。

 

 株式市場などではイランのミサイルによる被害が軽微だったこともあって、戦争は遠のいたという意見も出ている。着弾の数時間前に避難が済んでいたとの情報もあって、両軍共本気ではない可能性はある。思い出したのが、1940年5月までの西部戦線。前年ポーランドを葬ったナチス・ドイツと英仏は戦争状態にあるのだが、独仏国境周辺では8カ月間ほとんど衝突がなく「Phoney War:まやかしの戦争」と呼ばれていた。

 

 しかし5月には独軍の「電撃戦」が始まる。それまでの期間、水面下での軍事行動はあったのだ。今回も同じで、サイバー空間を含めて水面下の軍事行動は活発化していると見るべきだ。この「まやかしの均衡」がどれだけ続くかは、全く分からない。ただ今すぐには崩れないと見られ、このタイミングでの総理による中東歴訪は日本政府の英断だと思います。