Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

内政問題・外交問題の狭間

 このところ国際関係の緊張が高まっていることもあって、グローバリズムが少し後退している。サイバー空間に国境はないと、「Global & Digital」を推し進めている僕らにとっては、困った事態だ。2000年ころからサイバー空間での日米欧連携、TPPやRCEP、TiSAなどの貿易自由化交渉に関わってきて、一歩一歩進んでいる実感が2015年頃までは会った。それが、2016年になると、

 

トランプ大統領誕生

・「Brexit」が決まる

 

 という2つのサプライズで一気に後戻りした。米国はTPPから一方的に離脱、WTO等国際連携に冷淡になり、バイデン政権になってもその影響は続いている。英国の方も、大陸と距離を取ってアジアに軸足を移すのはいいとして、国内でスコットランド独立・アイルランド問題など抱えて苦しい状況だ。

 

 グローバリズムの究極のGoalは、世界政府樹立だろう。しかし実態は新たな独立国が増え続け、国連加盟国も200を優に超えた。世界経済的には統一市場が望ましいのだが、現実はより細分化される方向に進んでいる。その一つの理由が、内政と外交のGAPだ。その実例になる記事がこれ。

 

ポーランド憲法裁「自国法、EU法より優先の場合ある」 EUは反発:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

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 EU加盟27ヵ国の法律の上には、欧州委員会の定めた「EU法」がある。ここでいろいろ決められるので、イギリス国民が「メルケルに操られている」と怒ったわけだ。もちろんその制約はフランスやドイツにもかかる。そしてここポーランドでは、EU法の優越に対して「違憲の疑い」まで出てしまった。

 

 各国には主権として内政の自由はあるが、それは国際的に決められたルールの範囲内でというのは当然だと思う。ただ三権分立の立場から、行政や立法がその国際ルール(ここではEU法)を順守すると約束しても、司法がその通りの判断をするかどうかは分からない。EUという壮大な外交実験も、いろいろなところで綻びが生じていて、その一つの例だと思う。

 

 ひょっとすると背景には、ロシア・ベラルーシの「EU切り崩し」工作があるのかもしれない。彼らにとってはポーランドは、大EUとの緩衝地帯なのだから。欧州委員会のガバナンスがどう維持されるか、注目される案件ですね。