コンピュータの構成要素のうち、演算装置(CPU)と同様に重要なのが、記憶装置(Memory, Storage)である。入出力装置(ディスプレイ、キーボード、プリンタ等)や通信装置も重要だが、演算装置と記憶装置なくしては何もできない。
僕がコンピュータなるものをいじり始めた時、研究室にはまだ磁気テープ装置があった。半導体Memoryは高価なので、CPUの隣に少しあるだけ。すぐには演算に使わないデータは、Storageとしての磁気テープに記憶される。それを何度もかけ替える作業は、結構面倒くさかった。
大学の電算センターには新鋭機が入っていて、Storageがハードディスクドライブになっていた。100MByteあるというので、びっくりしたものだ。ハードディスクも磁気記憶装置である。円盤が高速で回転し、磁気ヘッドがそれにぎりぎりまで近づいて、データをやりとり(読み書き)する。ヘッドと円盤の関係を、メーカーは、
「ジャンボジェットが地表1cm(1mmだったかな?)を飛ぶくらい」
と説明していた。技術のすごさを示す言葉なのだが、ちょっとブレたらクラッシュしてしまうという弱点を表したものでもある。
初期のハードディスクは、しっかりと設置される場所にしか置けなかった。稼動中に衝撃を受ければクラッシュしかねなかったからだ。耐衝撃性を高めることで、PCにも搭載できるようになったが、やはり故障率は他の部品より高かった。
そこで考え出されたのが「RAID HDD」、複数のハードディスクドライブをまとめてひとつのStorageに見えるようにしたもの。複数のドライブに同じデータをもたせる冗長性があって、一つのドライブがクラッシュしてもデータそのものは使えるというアイデアだ。
そんな苦労もしたハードディスクドライブの歴史を、僕は50年ほど見てきた。しかしその時代も、もう終わりそうだ。
近い将来「ハードディスクは滅亡する」、ストレージ企業が予測 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
SSDは半導体メモリ、高価ではあるが衝撃に強く、データ入出力速度が高い。いずれコストが下がってくれば、磁気テープをハードディスクドライブが置き換えたように、Storageの地位を奪うだろうとは思う。
ちなみに「ストレージ」と発音しても米国人には分かりません。ちゃんと「ストーレージ」と言いましょうね。