Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

半導体なんてそんなものさ(後編)

 僕自身は半導体産業にいたわけではないが、企業内で大学の先輩の多くが半導体事業部門にいて、幹部も少なくなかったことから時々事情は聞いていた。後に全社の事業を見る部門に移って、半導体事業部門のボラティリティの高さを経営層が嫌っていることも知った。

 

半導体産業、栄光と挫折(前編) - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

 

 で紹介したように、いい時はいいのだが業績が悪くなるとどうしようもない。何度も好不調を繰り返す事業は、企業内でも日陰者になっていった。若いころに事業部門の幹部と会食(大学のOB会のようなもの)で同席させてもらった時、幹部の独り言のような一言「半導体事業なんて、そんなものだよ」が忘れられない。

 

 その変化の波がビジネスを越えて安全保障の領域でも起きて来て、今半導体産業は上り調子になった。直接的には世界的な不足だが、根底には米国の戦略変化がある。中国という強力なライバルが見えて来て、デジタル分野の遅れは致命傷になるとの思いが米国にある。そのキーファクターが半導体だ。

 

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 米国は5G分野で中国に立ち遅れて、世界の情報を習大人に握られそうになっている。そこでクリーンネットワークを構築しようと、先日の日米首脳会談でも「日米は半導体を含む機微なサプライチェーンで連携する」と宣言した。

 

 米国からの要請もあり、日本そのものの安全保障のためにも、自前の半導体産業・設備・技術が必要なのだ。今やあらゆるものに半導体は使われ、その多くのものはインターネットに接続し、もしくはしようとしている。PC・スマホはもちろん自動車や家電機器に使われている半導体の片隅にマルウェアが仕込まれていて、ある条件で動き出して社会インフラを止める・・・などということもあり得る話。今はどれほど半導体産業育成に助成金を注ごうが、日米半導体交渉のような圧力を米国がかけてくる心配はない。そこで政府は再び半導体産業に目を向けたわけ。

 

 再び「産業のコメ」ならぬ「社会の礎」にしてもらえそうな半導体産業に、僕もエールを送りたいと思います。若いころ薫陶をもらった幹部はもちろん、ほとんどすべての知り合いは現役ではないのですがね。