Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

経済安保上の尿素水

 かつて「事業継続ソリューション」を売っていたころ、やはり先進的な取組をしている企業さんにインタビューしたりイベントに招いたりしていた。その時思ったのは、取組を進めている企業の責任者ほど「ウチなどまだまだです」と仰る。最初は謙遜かと思ったのだが、10人以上の人に会って皆さん口をそろえるので、どうも本音らしいと気づいた。

 

 つまり最初は地震対策をした、次は洪水、そして主要部品を依存している企業の事業継続、さらには海外からの材料が来なくなったら・・・と取り組めば取り組むほど新しいリスクが見えてくるのだ。「知らない方が幸せ」というのは、ある程度真実だと思った。

 

 今話題になっている経済安全保障の議論も、似たところがあると思う。食糧自給・エネルギー自給から始まり、HOTなのは半導体産業の国内誘致、あるいは外資系企業のクラウド採用是非にも及んでいる。国境のない市場、グローバリズムを進めてきた僕としては、複雑な思いだ。無理に国産化を図るのは、経済合理性に反する。

 

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 そんな中、韓国で中国に依存していた尿素水の供給が止まり、方々でトラブルが起きているとの報道があった。

 

韓国、尿素水不足騒動…あの工場はどうなったの? サムスンが三井物産の協力で尿素量産したが・・・(1/6) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

 

 この記事には、ディーゼル車の排ガス浄化に必要な尿素水不足(価格高騰)が社会問題になっているとある。しかし識者に聞くと、単に車の話ではなく火力発電所の排気浄化に使う尿素水も足りなくて、この冬に向けて発電量に懸念が出ているという。

 

 韓国の火力発電所(公営180基ほど)の約15%が、尿素水が無くなると稼動できないタイプだという。韓国はある意味グローバリズムの勝者だ。海外から安く調達できるものは止め、勝てる商材(例:半導体)に特化した。それに遅れた日本は、幸か不幸か尿素水問題では深刻な打撃は受けていない。

 

 日本では、この件はCOP26からみの環境問題としての報道が主体と聞くが、経済安全保障上の議論に発展する可能性もあるだろう。尿素水なんて僕は何に役立つのか全く知らなかったのだが、こんな材料・製品はいくらでもあるはず。本件はエネルギー自給に関わるので、半導体より重要?いや供給懸念は当面ないから、安保対象外?

 

 今後の報道には注意しておきましょう。