Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

対中投資促進の議論

 アフガニスタンで一応の区切りをつけたバイデン政権は、対中ハイテク戦争に向けて矢継ぎ早に法案や大統領令を出している。野党共和党にも異論は少ないようで、すでに2本の法案が下院を通過したという。

 

 そんな中、中国にも市場や事業所を持ち、すでに投資もしてしまった日本企業はどうすればいいのか?そんな人たちが集まる、ある大学主催の中国との連携を議論するウェビナーに参加した。今回のテーマは「米中ハイテク摩擦下の日中連携の展望」で、5Gで有名な中国企業の日本法人の人、国際連携に詳しい大学教授、日中投資促進に関わる業界団体の人の3人がプレゼンテータだった。

 

 中国企業の人は通訳が入ったこともあって時間を予定の倍くらい使って話したが、内容は自社の宣伝ばかり。ただ大学教授と業界団体の人の話には、面白い指摘があった。

 

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・在中国の米国企業のうち、対外移転を考えているのは15%。欧州企業の90%が対中国投資を続けると回答。日本企業務含めて中国当局の規制強化を警戒している企業は少ない。
 
・ハイテク分野でのデカップリングはあるが、米国企業もその他の分野では交流を深めている。日本企業だけがナイーブに、安易なデカップリングに走るのは得策と言えるか。
 
・現地の日本企業からの相談は2種類ある。ひとつは政府の規制強化、もうひとつは中国企業との競争環境の激化。社内的には中国現地の情報が日本本社に伝わらない事。
 
・中国人が嫌っているのは米国の強硬な外交姿勢など政府の行動、自由を愛する国民性など市民そのものを嫌っているわけではない。
 
 お二人が口をそろえたのは「米国政府は対決姿勢だが、米国企業は対中投資を増やし、金融機関などは現地スタッフを増員している。ナイーブな日本企業が腰を引いているうちに米国企業らに市場をさらわれてしまうぞ」ということ。
 
 僕は「国進民退が顕著で、特にハイテク産業への圧力が強い。株価も下落し、投資家は習大人に警告をしている。そんな状況で対中投資は益があるのか」と聞いた。大学教授は「それは一部の産業だけ、データ流出の危険性を見ているから」、業界団体の人は「一時的なこと。金融リスクのひとつにすぎない。仮に対中投資しないいとして、どこにするのか」との回答だった。
 
 まあ「投資促進、イケイケどんどん」型のイベントなので当然ですが、本当のところどうなのよとは聞いてみたい気分でした。