Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

電気通信分野の事故報告(前編)

 東北新社やNTTの接待事件で、総務省が「大きな許認可権限」を持っていたことを改めて認識した。権限の裏には責務が付いているから、例えば東北新社外資規制違反については、総務省は(見逃した)責務を負うことになる。電気通信分野の許認可権の裏返しとして、当然事故の検証や再発防止も総務省の責務なのだが、それを全うするためには事業者からの事故報告や関係者含めた検証が必要になる。これまでの電気通信分野の事故と言えば、
 
基地局がダウンして、当該エリアの携帯電話がある期間不通になった。
・放送局がダウンして、当該エリアのTV放送がある期間停止した。
 
 というようなものだった。何台×何時間の障害かという数値で、これは重要事故、これなら軽微な事故と分けていたらしい。事故関連のルールは、ほぼこの時代の物を踏襲しているらしく、単に通信・放送事業者のみならず、交通・金融・教育その他の事業者も含めたシステムが利用を支えている現在では、時代遅れになっているのは確かだ。
 

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 今回総務省でこの問題に取り組んでいる担当官から、話を聞く機会があった。彼はまず、一方方向の放送や通信基盤のサービス提供だけだった従来と違い、電気通信分野の事業は多様な側面を持ち、かつ事故等あれば以前とは比べ物にならない被害をもたらしかねないと背景を説明した。そこで電気通信分野の事故報告・検証制度等の今後のあり方を議論することになり、総務省では「IPネットワーク設備委員会」の下に「事故報告・検証制度等タスクフォース」を設置したという。
 
 このタスクフォースでは、
 
・通信事業者の範囲が拡大してきていることへの対応
・報告の基準となる重大事故や軽微事故の程度
PDCA対応に加えてOODAループ(Observ-Orient-Decide-Act)的対応
・重大事故の予兆や兆候の取り扱い
・より広い学問による調査機能のあり方
 
 などが議論されている。現時点では、すべては決定事項ではない。4月までに複数の事業者・利用者・有識者ヒアリングを行い、6月に「IPネットワーク設備委員会」でとりまとめ、パブコメを経て7月に「情報通信技術分科会」に上げるという。
 
 問題意識はわかるのだが、これまで電気通信事業者に対してだけだった総務省の「権限」が他の事業者にも及ぶのではないかと、ちょっとだけ疑問に思った。
 
<続く>